第4話
リリーの精神世界にたどり着いた。目に見えたのはハルナがニアを庇ったあの仕立屋だった。ふむ、何故ここに。辺りを調べる。机に突き刺さった裁断鋏まで再現されていたが、異なる箇所が三つあった。
一つ目。店の裏側、あの時ハルナとニアが入ってきた所だ、に入り口はなく、代わりに小さな扉のようなものがあった。
二つ目。中央の机の上にあの頃なかった謎の扉がある。小さな扉で私が通るにはちょうどいい大きさの扉だった。どこに通じているかはわからないが、半開きの扉を見る限り、くぐるとまったく別の所にたどり着きそうだ。
三つ目。中央の机の上に作ったはずのドレスがなかった。ドレスを作る前のマネキンがそのまま放置されている。そしてマネキンの近くにはボロボロのハンカチが落ちていた。前までここにドレスがあったとすれば、私がリリーと緊急同調できた理由がわかる。彼女が私のドレスをここで纏っているならばそれを素材に緊急同調できるはずだ。緊急同調できた理由はわかった。半開きの扉を見るにおそらくこの先にリリーがいるはず。扉の先へ急ぐ。
扉の先を少し進むと螺旋階段に出た。階段が腐った鍵盤でできている。しかし私は烏だ。この気味の悪い階段は無視して中央の吹き抜けを飛び降りる。適度に速さを調整しつつ下る。下れば下るほど少しずつ壁に描かれた星が少なくなってきて、ある所を境に、完全に消え失せてしまった。確実に辺りが暗くなるが、それでも先を急ぐ。さらに進むと壁に描かれているものが目とか、口とか血管のような体の組織を彷彿とさせるものに変化してきた。なるほど、彼女の精神状態はあまり良くないかもしれない。狂気に彩られた螺旋階段を下りきった。途中からリリーの体の一部と思われる形をした体の破片が吊るされるようになった。私はハルナと付き合いが長いしこのような光景は何度か見てきたが、果たしてリリーはどう感じたのだろうか。
階段の最下層までたどり着いた。最下層は禍々しい雰囲気が漂っていた。ただ事ではなさそうだ。一角だけ一般的なオフィスの入り口のようになっていて、中に入れるようになっている。おそらくこの先が終点のはずだ。
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