第3話
裏口の扉はロックがかかっていた。当たり前だ。これだけ警備網を敷いている建物なのだ。ここの扉にロックがかかっていなかったらそれこそ阿呆くさい。
退がれ、というハルナの指示に従い私は一歩引く。何から何まで彼女の世話になりっぱなしである。
すると彼女は何を思ったのか扉を蹴り壊した。
「この手に限る」
「いや、おかしい」
横の烏もやれやれとつぶやき頭を抱えている。飼い主の方もこの世のものではないと思っていたが、やはり烏の方もか。
しかしやはりというか、なんというか、その手は得策ではなかったと思う。轟音につられて館内の警備ロボットが集まってきてしまった。
「どうするのこれ?? 警備ロボットが集まってきたけど??」
思わず叫ぶ。
「中央突破だ。そこの螺旋階段が最上階まで繋がっているはずだ。行くぞ」
全く焦る仕草を見せない彼女の声に従う。
「ポコ! 先に螺旋階段を登るんだ! どこにロボットの制御室があるか調べてくれ! 」
「全く、人遣いが荒いんだから。わかりました。調べましょう。」
烏が彼女の肩を離れ、螺旋階段の中央を先に登る。
「ニア! 行くぞ! 」
なんでこんな大事にしちゃったんだこの人……。
彼女に続き階段を駆け上がる。下から警備ロボットが追いかけてくるが、ついに上からの増援にもぶつかった。
「蹴散らすぞ。構えろ」
彼女の掛け声と共に金属バットを構える。彼女は自分の影から大きな鎌を引き抜き、体の後ろに逆手持ちで構える。でかい。よくみたら手袋をしてる左手で構えている。
警備ロボットが戦闘態勢に入る。ハルナが先陣を切り警備ロボットに切り掛かる。それに続き私も金属バットで殴りかかる。ハルナの鎌は一体の警備ロボットを真っ二つにした。私はというと金属バットを振りかざしたのはいいが外した。慣れない。力任せに振り下ろすだけでは見切られてしまう。ならばこの金属バットの特性を活かそう。このバットは軽い。利き手だけで扱えるはずだ。右手にバットを持ち、左手による裏拳でロボットに殴り掛かる。外れる。それが狙いだ。ロボットが避けた先に金属バットを振りかざす。ロボットの脳天を貫き、機能を停止した。
次のロボットが来る。先ほど機能を停止した塊にロボットめがけて蹴り飛ばす。よろめいたところに足払いをかます。ロボットが横転したところにフルスイングをかます。金属バットはハルナがとどめを刺そうとしていたうちの一体も巻き込みロボット達を大きく吹き飛ばす。
「なかなかやるじゃないか」
ハルナが声をかけてくる。
「一応これでもひきこもりのゲーマーだけど、ジムに通って体を動かしてたからね。人並みには動けるよ」
「なるほどゲーマーのくせに体が自由に動かせるタイプの人間か。仲良くなれそうだ」
「お好みのゲームは?」
「アクション」
「いい酒が飲めそうだ」
そうだな、と彼女はつぶやき前から突撃してきた最後のロボットを吹き飛ばし壊す。
「ニア! 前に出ろ! 後ろから追いかけてきたロボットを一網打尽にする」
彼女はスカートの裏に隠してあったと思われる短剣を取り出す。右手に鞘を持ち、左手で柄を持つ。居合の構えだ。しかしその短剣でどうやって一網打尽にするのだろうか。
接近してくるロボットの一瞬の隙を狙い彼女は居合斬りをかます。しかしその刃筋が捉えたのはロボットではなかったらしい。その周りの空間であった。集団で突撃してくるロボット相手に衝撃波を繰り出す。轟音と共に床諸共ロボットを粉砕した。
「わーお」
思わず声が漏れた。あまりに現実離れしたその光景に。
その時彼女の肩が揺れ、膝をつく。慌てて体を支える。苦笑いをしつつ彼女が大丈夫だと応えてくれる。
「久々にこの短剣の力を最大限に発揮したせいで予定より霊力を注ぎ込みすぎた」
そういうと彼女は立ち上がる。ケロっとしているので、立ちくらみのような類の何かだったのだろう。
「行こう。後ろの階段は誰かさんが想定外の力で壊しちゃったし」
ハルナに声をかけて先を急ぐ。無駄口のすぎる女だと漏らしつつハルナがついてくる。
しばらく点々と襲ってくるロボットを蹴散らしつつ階段を登っていると、上の方からポコと呼ばれている烏が降りてきた。
「お二人さん。見つけました。制御室はこの上です。それにしてもハルナ、普段にも増して速いペースでついてきましたね」
「以前の探索以上かもしれない優秀な相方に恵まれたからな」
「一応優秀とは認められているのね」
素人にしてはな、と付け加えるハルナ。
「制御装置を停止させればおそらく警備ロボットを止めることができるはずだ。あとは階段を適当に登っていれば頂上につくというわけだ」
「でも、ここら辺が最上階じゃないの? 私がこの建物の責任者なら制御装置は最上階に付けると思うんだけど」
「一理ありますね。しかしこの建物、もう少しだけ上に続いています。ここで制御装置を破壊する価値はあるかと思います」
ポコが続く。
「あと、ここに制御装置があるということは上で元締めを叩いている間に乱入される恐れもある。壊せるなら壊しておく意味はある」
「まぁ壊せるなら壊しておいて損はないか」
そうと決まれば制御装置を破壊するまでだ。さっさと壊して最上階に向かおう。
螺旋階段を少し上がると、確かに横に逸れる形で扉がある。ポコの情報によるとここが制御室らしい。行こうかというハルナの掛け声に合わせて私も続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます