第5話

 長く、辛かった階段もついに終わりを告げた。最下層は床も謎の血管でできていると思っていたのだが、違った。最下層の床はあろうことか、私の会社のロビーと同じ床だった。そしてそこには私の顔写真と名前がかかれたIDカードが転がっていた。どうしてここにこんなものが。触って確かめたが確かに私のものだ。全くわからないが私のものであることは確かだ。もらっておこう。さらにあたりを見回すと血管的な壁の一部に私の会社の入り口と同じ扉があった。扉というか、入口全体がそこにめり込んでいるような感じだ。このような場所は見たこともないし、こんなところとつながっている会社に就職しようとした記憶もない。扉も律儀に同じものであり、おそらくこのIDカードがあれば開くのだろう。

 頭の中に疑問符が浮かんでは消えてを繰り返しているが、おそらくこの先に進めばすべてがわかるのだと思う。これが最期の扉になることを祈り、私はIDカードを認証装置にかざした。本人であることを確認した旨を述べると認証装置は扉のロックを解除してくれた。進もう。

 扉をくぐるとそこはみたことがない場所だった。若くしてある程度の役職についたわたしは会社の建物なら一通り見て回ったと自負している。しかしこのような場所は見た記憶がなかった。なにやら実験装置のようなものが所狭しと並んでいて、機械もたくさんある。その中の機械の一つに、入口のものと同じ認証装置があった。IDカードをかざす。すると機械が起動し、奥の暗くて見えなかった装置の電源がついた。

その装置を見て、思わず息を飲んだ。そして、すべてを思い出した。そうだ、私は会社に行く途中に……。

 その装置には、安らかな顔で眠る、数多もの管に繋がれた私が入っていた。

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眠りの姫に救いの未来を エピソードL けねでぃ @kenedyism

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