第3章 後編
それから数日。あんなに恥ずかしいことがあったのに、この行為がやめられない。
また大量に買い、口に頬張る。それを身体が吸収するのが怖くて吐き出す。毎日毎日、これを繰り返す。嫌なのに止められない。抑えられない。
今もまた、買いに行こうとしている。
買わなければ食べなくなるのに。頭では分かっているのに制御できない。
「あの時はお菓子をありがとう」
駆けてくる小さな人影。可愛らしい声。一瞬訳が分からなかったが、あの子だと合点がいった。
「お礼にこれ。お姉ちゃんに頼んでみたの」
差し出されたのは小さな瓶。コルク栓で蓋をされた褐色のガラス。ビー玉ほどの大きさでミニチュアみたいだ。
「この中に食欲を閉じ込められるんだって。二度と元には戻せないけど、それでもいい?」
自分にとって夢のような話だ。だが、所詮子供の戯言。できる訳ない。
「なら、お願いするよ」
体重を測った。また痩せた。食べたいと思わないのが、こんなに楽だったとは。あの日から食欲が、一切湧かない。何を見ても食べたいと思わない。
頰も凹んできた。嬉しい。顔には肉はなく皮一枚だけだ。本当に理想的だ。周囲から死神、骸骨、死に損ないなどと呼ばれるが、そんなの嫉妬からの言葉だ。
世の中の人間らは痩せたい、細くなりたいと口々に言ってる。みんな自分のようになりたいと、本当は思っているくせにそんな事を言って見苦しい限りだ。だが、内心負け犬達の遠吠えを聞くのは心地良い。最高の気分だ。
間違いなく
あの子は天使だったんだ。
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