第3章 中編

それから学校帰りに毎日のように食べたい物を買い漁った。

ケーキにまんじゅう。チョコ菓子にポテトチップスに甘しょっぱいおせんべい。

好きな物を好きなだけ頬張る。強烈な幸福感。堪らない。そして、吐き出す。良かった、これで太らない。


なのに、体重が増えてきた。頰も以前より膨らんできた気がする。でも、食べ物を口にすることはやめられない。

食べたい、食べたい、食べたい。でも、体重を増やしたくない。増えると頰の丸みが増す。また、醜くなってしまう。怖い。


食べちゃいけないのは分かるのに、口に含むことはやめられない。食欲が暴走する。自分ではもう制御できない。


今日は家まで我慢出来なかった。この時間だ。公園には誰もいない。それでも人目をを気にして、公園の山型遊具の中に入り込んだ。ここなら誰にも見られない。急いで食べ物を口に放り込む。噛み砕き、舌で味わう。あぁ、幸せだ。このまま飲み込んでしまいたい衝動を抑え、ビニール袋に吐き出す。何度もそれを繰り返す。


「わー、美味しそう。一つちょうだい」


鈴のような声。急に聞こえたその声にビクッとした。いつの間にか隣に女の子がいた。

一体いつの間にここに来たのだろうか。全く気づかなかった。食べることに集中し過ぎていたのだろうか。自己嫌悪だ。


「食べる?全部あげるよ」


「えっ?こんなにいっぱいあるのに」


「自分は食べちゃいけないんだ。なのに、食欲に負けてしまう。だから、これは無い方が良い。全部あげるよ」


自分の吐瀉物の入ったビニール袋だけを持ち、大量の食べ物を残し、その場から逃げ去った。


自分は、なんて弱いんだ。












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る