第2回 前編
テレビでは朝からずっと人気アイドルYと女優Mが結婚したとニュースで騒ぎ立てていた。できちゃった婚らしい。交際一年ほどでのゴールイン。さすがにもうその内容は聞き飽きた。
一応、私にも恋人がいる。
彼とは付き合ってもう四年になる。三十歳の誕生日まであと一週間。
少しメイクを変えてみた。けれど、彼の反応は特に無し。買ったばかりのピアスもあっさりと無視された。
前はこうじゃなかったのに。些細な変化に気づいてくれ、容姿だけでなく内面も褒めてくれた。好きだと何度も言ってくれた。それなのに、今はどれも殆どない。
デートの時も会話はない。無言が果てしなく続く。私と居て彼は楽しくないのだろう。つまらない筈だ。ただ恋人がいると周囲にアピールする為だけの存在だ。私にとっても、彼にとっても。
この関係を続けることに何の価値があると言うのか。ただ虚しいだけだ。
それなのに別れられない理由。
まだ、彼のことが好きなのだ。不器用だけどそんな彼を愛している。
この気持ちは何処までいっても私の独りよがり。
お願い
もう一度、私を愛して
私の気持ちとは裏腹に彼の私への態度は冷めていく。この前のデートの時、こっそりスマホを見た。別の女と楽しそうに連絡を取ってた。ツーショットの写真も仕事フォルダの中にあった。
今日、友達から彼が女の子と一緒に歩いていたと言う電話があった。やっぱりなと思った。特徴を聞くと、あの写真の女と一致した。
どうして。どうして私じゃ駄目なの?
こんなに悲しいのに涙一つ出てこない。
電話が鳴った。彼からだ。
スッと涙が零れ落ちた。嬉しかった。
「はい」
「あっ、メイ。今日会える?」
「うん、すぐ行く」
返答を待たずにスマホをカバンに投げ入れ、玄関に走る。彼に会いたい。空回ってるのは自分でも、分かる。でも、抑えられない。
彼のアパートに行くことしか考えられなかった。
会いたい。今すぐに
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