Re : 第一羽 終幕
「本当だ。お母さんの言ってたとおりだ」
鈴のような弾んだ声があがる。嬉しそうなのは何よりだが、近づき過ぎるのはあまり宜しくない。事前に伝えてはいたが、多少の不安は拭えない。
真っ赤に染まった鳥達がその脚を啄む。くちばしで抉られ、みるみるうちに穴が開き、肉が引きちぎられる。
中には体のバランスがうまく取れず、胴体をは引きずりながらも、それを貪っていた。
食べられたそばから、その足は僅かながら再生していた。持ち主が死なない限り、血肉は生み出される。だが、食い進むスピードの方が圧倒的に早い。
骨だけになると、彼等は互いに襲いかかった。予想通り共食いが始まった。
「どの子が残るかなー。ワクワクする」
子どもは残酷だ。それと同じくらい純粋だ。
最後の一羽には特別なことが起きる。何も知らない筈の彼等もどこかで分かっているのだ。だから、こうなる。
足の肉が少し出来た。我先にとまた群がる。
「みんな、翼をありがとう」
朝の日差しが窓から入ってくる。何か夢を見ていた気がするが、いまいちよく思い出せない。
ちらりと時計を確認する。休日なのに少し早く起きすぎたみたいだが、それも気にならない。
ベッドの上で軽くストレッチをし、車椅子に座る。動かない足を手で移動させる。もう慣れたものだ。
不意に風に当たりたくなった。以前は何とも思わなかったガラス戸が少し億劫に感じるが、仕方ない。
戸を開けた。外の空気が流れてくる。心地良い。良い朝だ。
鳥のさえずりが聞こえる。
それは鈴を転がしたような声だった。
今日はどこを飛ぼうかな
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