バレンタインとホワイトデー ヒメノ勢とか8ブロックやその他キャラもいります?

 8ブロックの城に帰ってきた俺達は、暖房の効いたリビングでアリステルの処遇を決めることにした。

 この場には俺、アリステル、フラン、カムイ、イズミがいる。他は仕事か寝たかだろう。


「捕虜はちゃんと扱ってー、国王様のお相手とかさせられるのはちょっとなー」


「せんでいいせんでいい」


 ソファーに寝ながらこいつについて考える。別に人質にするつもりもないし、虐待もしない。試験の相手だけど害悪な敵じゃない。履き違えないようにしよう。


「城から出なきゃ好きにしろ。出たら斬る」


「雑だねえ。っていうか寝てないで起きなよ」


「今回ばかりは無理。マジで起き上がるのしんどい。本当に無理」


 疲労が半端じゃない。枕と毛布のおかげかマジで寝そう。ここまで疲れるとは予想外だ。やっぱ未完成の魔法はしんどいな。


「凄い魔法でしたよね」


「あの白いやつかー、やばいっしょあれ。おつかれー。しんどかったね」


「お前敵の自覚ないのか。普通に労うなや」


「いいじゃん、マジすごかったし。サカガミ本気出すとかっこいいじゃん?」


「言われたことないわ」


 ギルメン以外が言うことじゃないぞ。こいつも感性おかしいのか。


「そう? 気にしない気にしない。あたしは逃げる気もないから、ここにしばらく置いてくださいな」


 喋りながら遠慮なくクッキー食いやがって。それ数日分のおやつだぞ。


「ついでにあっちの弱点とか知らないかしら?」


「んなもんないっしょ」


「言い切ったな」


「だーってみんな超強いし。勇者科マジやばくない? そこに超人混ざるとか対処無理しょ」


「結構できていただろ。三日月さんとカムイ封じられるのは死ぬぞ。もうやるなよ」


「敵に言うことじゃなくない?」


 ごもっとも。正直鎧使うか迷った。鍵だけで対処するなら、ガードキーと何かでいけそうだ。だがそれだとカムイが集中攻撃されそうだったし、超人をぶつけられても困る。


「実際かなり苦戦しました。本当に紙一重でしたよ」


「そりゃよかった。カロンちゃんも浮かばれるよ」


「作戦はあいつが立てたんだろ?」


「そだよー。リクさんはまず学生だけでやってみなさいって。負けちゃうような穴だけは勝手に塞いどくってさ」


「負けってのはブロックの負けか。でなきゃアリステルはここにいないだろ」


 些細な勝ち負けは生徒任せなんだろう。軍師は厄介だな。本人がいないところでも効果を発揮する。


「で、どうやってシルフィちゃん倒すの?」


「捕虜が作戦会議に入ろうとするな」


「いいじゃん暇だし。城からは出ないからさ」


 なかなかに神経図太いやつだな。スナイパーって忍耐とか緊張感とか隣り合わせすぎて強者になるんだろうか。


「スパイは危険」


「あたし疑われてるねえ。イズミちゃん出し抜けると思ってないよ」


 リラックスした笑いだ。陽キャの感性がわからん。イズミにクッキーあげたりして一緒に食っている。仲良くなったのか。もしくは元から知り合いなのかも。


「普通に聞かせるのはおかしいのよ」


「アリステル、逆にどうすれば王都攻略できる?」


「リクさんとイーサンさんと忍者仮面とシルフィちゃん倒す?」


「できねえよ」


 それができたら苦労しないんだよ。改めて厳しい条件だな。突破できる人間は限られているし、マジでどうしたもんかなあ。


「なんか最高の作戦とかないか?」


「最高かどうかはわからないけれど、アジュくん達が帰ってくる前に話し合ったわ」


「それで?」


「完全に正面からの全面対決よ」


「今勝てないって話をしたよな?」


 急に提案されると困惑するなこれ。正面戦闘で勝てるはずがない。


「絶対勝てるわけないと思うでしょう? けど軍師のカロンとリクさんには策略で勝てないわ。なら正面から力押しで通る。三日月さんがいるなら可能よ」


「過大評価ではないか? オレとてイーサンとリクの同時相手は厳しいぞ」


「超人は超人で封じます。三人をフルに使い、実質超人の助っ人をないものとするのです。あとは生徒だけ」


 なるほど、お互いに三人しかいないのだから、三対三の戦いにして関わらせないようにするのか。だがそれでも難しそうだな。


「勇者科の敵はシルフィ、カロン、マオリ、ルーミイ、ももっちだな」


「前線に出られるのはシルフィさんとマオリさんとももっちですね」


「カロンも強い。けれど案外戦闘員は少ない。各個撃破は可能と判断する」


「いけるのか? マジで?」


 可能性はある。もう少しちゃんと聞いてみよう。打開策があれば採用したい。


「ももっちはイズミちゃんと誰かに担当してもらうわ。忍者とアサシンなら相性も悪くないでしょ」


「任務了解。決着をつける」


「マオリさんは……僕がまた一騎打ちでもします?」


「それがいい。あいつの性格なら乗ってくるだろ」


 意外といけそう。完全に個別に当たることになりそうだが、それをでかい戦場でやることで全部に決着をつける形か。


「というわけで正々堂々とぶつかるのよ」


「8ブロックがいいとしても、あっちが乗るか?」


「乗るわ。試験が長すぎるから」


「身も蓋もないがその通りだな」


 そんなこんなで早期終了を目指し、次の日には全面対決が行われた。


「うーむ、まさかあっちも全軍投入してくるとは」


 高台より見渡すと、両軍の大軍勢が壮観である。こっちの軍団もほぼ全員投入だからな。かなりの大軍勢だ。


「ノリのいい軍で助かったねえ。案外言ってみるものだにゃ」


 俺の近くには、ルナと三日月さんとカムイにアオイとミリーがいる。ここが軍師連中との最後の打ち合わせの場だろう。


「というよりサカガミ殿のおかげでしょうな」


「俺?」


 三日月さんの言うことがいまいちわからん。俺よりは三日月さんじゃないかな。騎士団長のネームバリューはやっぱり強いのさ。


「待ち構えていたにもかかわらず、潜入工作員にしてやられ、勇者科を捕虜にされた。探索の余裕もあったので、王都の地形もある程度把握できた。これでは不利と判断したのでしょう」


「地道な活動が実を結んだってことね。やるじゃない」


「俺だけの手柄でもないだろう」


「ちゃんと活躍していましたよ」


「サカガミさんは、ご自身が思っているより凄い人だと思います」


 だといいんだがね、足手まといになるのが現状だろう。鍵が全部使えない状況じゃ、俺は置物に徹する方が無難なくらいさ。言えば士気を下げそうだから言わないけどな。


「じゃあ最終確認だ。前線組が突撃。俺と軍師組は後方。超人は超人を三人で相手する。それぞれ勇者科は勇者科を、それ以外はそれ以外を、総力戦だ」


「ここまで来たんです、勝ちましょう!」


「さて国王様、号令を」


「…………いいだろう。今日くらいは真面目にやるさ」


 兵たちの前に出て簡単に締めの言葉をかける。国王のこういう業務も慣れてきたぜ。できる限り堂々と、長話はしない。


「この一戦にすべてがかかっている! 各員奮戦激闘を期待する! 勝つぞ!!」


「ウオオオオオオォォォォ!!」


「突撃!!」


 こうして前衛が一斉に突撃を開始し、合わせてシルフィ軍も迫る。


「いいぞ、俺達はしばらく観戦だ。アオイ、ミリー、軍師役は頼んだ」


「はい!」


「任せてください!」


 軍はおおまかに二種類だ。アオイとその仲間部隊。もう一方はミリー軍師の8ブロック部隊。カムイはマオリに専念させる。そしてそれぞれが本陣から去っていく。三日月さんとルナだけになると、少し不安だ。


「ねえねえあっくん、本当にシルフィちゃんは来ないの?」


「来ない。少なくとも最前線には出て来ない」


「国王様だから?」


「国王だし強すぎるから」


 やらないとは思うが、シルフィ単騎で俺と三日月さん以外の全軍を瞬殺できる。

 そこまで目立つわけがなく、そして前線に出て大活躍もしない。

 ほどほどに戦いを見つつ、最後に出てくるはずだ。


「今回は前回のように奇襲もない。生徒に成り行きを任せつつ、最後に出る」


「そこまで待機なんだねえ。みんながんばれー!!」


「マジで頑張ってくれ。これリクさんの作戦ですかね?」


「いや違う。オレはやつの布陣を見ているが、こういった形ではない。生徒の自主性に任せたのだろう」


 三日月さんが言うなら間違いないだろう。8ブロック陣営で一番リクさんを知っているだろうし、ならカロンあたりかな。あいつも厄介だよなあ。


「リクは軍師役ではありますが、武芸においても騎士団長内で五本の指に入ります。どうかお気をつけを」


「あの人欠点とか無いんですか?」


「凝り性なので、休日は料理に小洒落た食材を入れてみたり、ボードゲームを買ってきては、できそうだったと言いながら魔法で改良したりと、自由で面倒なところがありまして」


「戦闘に関することでお願いできますか?」


「無い。剣術においてはオレが上ですが」


「まず三日月さんより上がいないと思うんですよ」


 この人は純粋な剣技で言えば人類最強だろう。参考にならないな。欠点をそのままにする人が騎士団長できるかと聞かれればまあ、無理だし。観念して真面目にやるしか無いぜ。


「カムイ殿が一騎打ちに入りましたな。戦場の華として咲く、正直羨ましい」


「頼むぞ、お前なら勝てるはずだ」


 カムイはこちら側であり、神の弟子だ。マオリが相当特殊な環境にいない限り、カムイの技量と主人公補正で勝てるはず。


「カムイくんを信じてるんだねえ」


「実際強いんだよあいつ。来てくれて助かった」


 マオリ相手に大健闘である。純粋に強いタイプは俺と相性が悪いので、対策取れるのは助かるぞ。よしよし、今のところいい感じ。


「頼むぞイズミ」


「了解。そこにいるのはわかっている」


「おほー、見つかっちまったぜい」


 ももっちとイガ忍者軍団だ。ここまで来るのは想定内。ちゃんと忍者なら気づくルートを少し開けておいた。


「お誘いどうも。あじゅにゃんの作戦かにゃ?」


「そういうこと。ちなみに本陣とは名ばかりだ。俺とイズミが暴れられるようにセッティングした」


「排除開始」


 アサシン部隊が援護に来た。こうして忍者VSアサシンという面白そうなカードが組まれる。


「鉄槍波」


 鉄の槍が地面から大量に飛び出してくる。ここはイズミのトラップゾーンだ。そのために人は少ないし、目立つように俺がいる。


「火遁、爆竜ボンバー!!」


 火竜が鉄の波を溶かしながら突っ込んでくる。それを合図に乱戦が始まった。


「お互い、ある程度手の内は読める」


「そこからの引き出しの多さが勝負だぜー!」


「サカガミ殿、どうやら呼ばれているようです」


「呼ばれる?」


 戦場の奥に目をやると、巨大な紫の鎖が大樹のように生え散らかしていた。

 上に忍者仮面とイーサンさんとリクさんがいる。魔力が垂れ流しだからわかる。


「なーるほど、お見通しか」


「これより超人三人、すべてあの地へ向かいます。ご武運を」


「ありがとう、そっちも気をつけて」


 こうして超人は決戦の地へ行く。さて、いつ出てくるシルフィ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る