十二章 子猫の恋 <Ⅳ>鈴の望み
「
割れた声が
太った体をねじ込むようにして入ってきたのは、
「ええい、下がれ! 役立たずめ! 鏡とは一言も話すなと、言いつけたのを忘れたか!
言っていることが最低だから、こいつが強欲な
「望みは
と言いつつ、本人は
長持ちの散乱している通路が、狭くてなかなか抜けられない。真横になってつぶれたり、勢い余って転んだり。かなり面白い。
そのすきを捉えて、リンは望みの鏡に白い頬を寄せて、早口に言った。
「シグレ様。お願いします。私の
――えええー? なんじゃ、その望み。
ははは、と楽しそうにシグレが笑った。
「その望み、かなえよう!」
参の鏡からキラキラと光る粒子が、
人形は頭をもたげると、
顔を上げると、
見覚えのある美しい少年が、夢見心地で見つめている小さな少女の手を取った。
シグレは目玉が飛び出しそうになっている陰陽師を睨んだ。
「触るな。
若武者が手にした扇子をかざすと、
「ひいやああああ!」
寄り目になった陰陽師は、慌てふためいて逃げ出そうとするが、
すぐ後からシグレが、リンの手を携えてやって来る。
横目でこれを見るや、陰陽師は出口に突進した。しかし狭い。
つかえた腹が、ぎゅっと詰まって、顔面を朱に染める。どうなることかと見守っていると、「ポン」と音を立てて抜け出した。
だが、敷居に沓の爪先が引っかかり、勢いがついて見事なとんぼを切った。
地面に大の字に延びた。――失神している。
リンの楽しそうな笑い声。あたしも一緒に爆笑してしまった。
シグレとリンは手を取り合って土蔵を抜け出すと、明るい日差しのもとへ駆けていった。
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