十一章 残された望み <Ⅱ>望みを返せ
「これは憶えてますか」
少女が
「まさか、参の鏡?」
「よかった。すっかり思い出しましたね」
微笑む少女の
少女はひざまづいて猫の首に紐を巻きつける。
猫はこれ見よがしに
黒い円い石は真ん中でひび割れていた。
「この鏡にきみは二つの名を
――そうだった。せっかく水神様が名前を授けてくれたのに、あたしは望みを言い忘れた。無事に家に帰りたいと願うのを忘れた。
「かなう望みは、まだ一つ残っている」
猫は勝ち誇ったように言った。
「なにそれ? 今でも?」
「望みの鏡をなんだと思っている? 鏡は果たさぬ望みを遺すがゆえに、ひび割れながらも砕けなかった。僕は二つ目の望みのために、どれほどきみを待ち
「――あれからずっと待ってたの?」
あたしが
「――だが。あろうことか、きみは僕を憶えていなかった。鏡の間も、
猫の瞳が、
「その望みは僕のものだ」
やっぱりシグレだ。あのときのあいつだ。
――わごぜを決して生かして帰すまい――
「返せ」とシグレが言った。
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