七章 鏡の呪い <Ⅲ>ヒミコさまの呪い
轟々と激しく風が
天から大渦を巻いて吹雪がやってきた。
雪片は
戸口が開いた。頭も
よろめく姿は、今にも風に
天地も
一瞬でも
のろのろと時が経つ。見守っているのが、ひどく息苦しい。気が遠くなるほどに長いことかかってようやく、その人はさきほどの洞窟に
その
ヒミコさまは雪に
痛々しく
そのとき灯明が風に吹き流されて消えた。時をおいて、また灯りがともったとき、ヒミコさまは祭壇の前で細い布包みを手に取っていた。
幾重にもくるんだ布を開くと、黒い小刀が現れる。ヒミコさまの華奢な掌が、その
そして、白い
小さな体が
白かった衣がみるみる朱く汚れていく。
あたしは口を開けたまま声が出せなかった。
体が石になってしまった。
助けて! 誰か、助けて!
「村を救わぬ神を、吾はこの血で呪ったのじゃ」
再び灯明が消え、岩屋は闇に沈む。
その
「滅ぶ村は珍しくもない」
ヒミコさまの声がかすれた。
「だが――。頭は承知しようとも、胸が聞き分けぬ。
吾が村ばかりは、吾が子ばかりは諦めきれぬ。
吾は
――なぜ、救えなかった。なぜ、救わなかった。
吾は手立てを尽くしたのか。思い至らぬだけではなかったか。
愚かだったのか。祈りが足りなかったのか。神の
無念で、切のうて、苦しゅうて。ついには神を呪ったのじゃ」
吹雪は、巨大な魔物が絶叫するような咆哮を上げる。
光が失せた
世界を引き裂いた稲妻が、屏風岩を貫いた。
山が雪崩た。
「げに浅ましき
一生ひたすらに守ってきた鏡のうちに」
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