第2話 トイレとお風呂の使い方

見た目が10歳の美女児エルフの召喚獣、リンネが家に来て2日目。

子供どころか彼女すらいない20歳童貞の子育ては、早速壁にぶち当たった。

身体は大きくても中身は子犬のリンネの、トイレの躾。

昨日は部屋の壁際に座り込んでおしっこしそうになったので、無理矢理トイレに連れて行った。

スカートとパンティを下ろすのには、すごくためらったが、いまの所、替えがないので仕方がない。

これは召喚獣だ!と唱えながら下ろしましたよ……。


これって状況的には、10歳の金髪美女児を無理矢理トイレに連れ込んでパンティ脱がせてるんだよな。

いろんな意味でストレスだ。

早く自分で日常生活は出来るように躾ないと、これ以上リンネが成長したとき、俺の精神が持ちそうにない。


そんな苦労をしたにも関わらず、朝起きたら部屋の隅におしっこされてた……。


「こら!リンネっ!こんな所でおしっこしちゃいけません!」


と叱ると、「ううう~!」と唸って手をガブリ。


本格的に躾をしないとってことで早速、卒業時に貰った『新人召喚師の手引き~日常生活編~』をめくってみる。


……双霊召喚獣は外見は成体に近くても、知識や経験のない状態で召喚されます。なので生まれたての子犬と同じく、日常生活を送るための躾をしなければなりません。躾は召喚獣のタイプによって大きく変わりますが、大きくは有体召喚獣か無体召喚獣かに別れます。特に有体召喚獣で有機生命体タイプの場合は本当の子犬と同じく、最も手が掛かるでしょう……


ここに書かれたトイレや食事、攻撃行動の防止、野外での躾などの方法はドッグ種、ウルフ種、リザード族、ゴブリン族あたりを想定している。

極超高位召喚獣のエルフ族のしつけなんてどこにも載ってないよね。

仕方ないのでウルフ種の方法でしつけてみる。


…おしっこがしたくなると寝床からよちよち起き出して、数メートル進むとおしっこをする場所を探します。なのでその辺りにトイレシートを敷いてあげましょう……


敷いてみた。


寝転がってテレビを眺めてたリンネが起き上がってうろうろしている。手出しせずに眺めてみる。

たぶんおしっこだろう。

お!トイレシートを見つけた!そのまましゃがみこむ……。

って、パンティのままはマズイ!!

見ないようにしながらパンティを脱がせる。

またしゃがみこむ……。

こりゃ、あかん!女児のパンティを脱がせて、部屋でおしっこさせてるのを眺めてる自分に耐えられない!!

トイレシート作戦は脚下……!


面倒だが、何度もトイレに連れていって自分でパンティを脱ぐ事を覚えさせるしかない。


「リンネ!しー、しー、はここ!……はい、パンツ脱ぐ!」


「んん~~!しー、しー、出る!」


てな感じで、丸一日数回のトイレの練習をしてるうちに危なげながらも何とかトイレで用を足せるようになった。

それにテレビの教育番組や雑誌を見せてるうちに簡単な言葉も覚えたし、学習速度はかなり早いようだ。


やがて夜になり、次の課題に直面する。

お風呂だ。

こればかりは服を脱がせて全裸にしないといけないから、また精神が削られる……。

全裸は最初に見てるから分かってはいるが、最初から全裸なのを見るのと、服を脱がせて全裸にするのは違うんだよな。


「よし!……お風呂に行くぞ!リンネ!」


俺は腹をくくり、気合いを入れる。


「お~ふ~ろっ~?」


と、ぴょんぴょん跳ねるリンネを脱衣場に連れていき、大人しくさせると、水玉のブラウスの胸元のリボンを解き、胸のボタンを外してゆく。

リンネは「なにしてるんだろぅ?」って表情で俺を見上げる。

無垢な女児の服を脱がせてる俺。

なんかすごくいけない事をしてる気がして、緊張して手が震えてきた。


こいつは召喚獣、召喚獣だ!風呂に入れるのはドッグ種やガルム種なら当然だし!


身振りで万歳をさせてブラウスを脱がせ、次はスカート。

ホックがどこにあるか探して、苦労しながらパチリと外す。

女物の服の構造がさっぱり解らん。こちとら童貞ですから!

チャックを緩めると、いきなりパサリとスカートが落ちて、めちゃ焦る……。

・・・染み一つ無い真っ白な生足と、目の前にお、おパンティが!


……そっぽを向いて息を整える。洗面台の鏡の中の自分と目が合う。

ブラジャーとパンティだけの女児の前に跪く童貞の図。

犯罪の匂いしかしない……。精神が痛い。

これが同じ人間タイプのゴブリン族やラビ族だったなら変じゃ無いはずなのに!


いや、こいつは極レア召喚獣なんだから、今は耐えてとにかくちゃんと育成しよう!

と、意識しないようにパンティを下げ、片足ずつ上げさせて足を抜く。

見ない見ない・・・。エルフ族の女の子のがどうなってるかなんて全然興味ないもん!


極大魔法クラスの精神エネルギーを使ってやっと全裸にすると、いつものように俺も服を脱・・・、ってアカンって!

この生活に慣れるまでは、俺も裸になって一緒にお風呂はやめておこう。


俺はリンネを浴室に連れて行くと、温度を調節しながらシャワーを浴びせてやる。

最初はお湯の感覚に驚いて逃げてはいたけど、慣れてしまうと気持ちよくなったのか大人しくなった。

次にスポンジにボディーソープを泡立てて、全身を洗ってやる。

身体に着いた泡を舐めようとするのを頭を小突いて注意すると、してはいけない事だ、と理解したらしい。

昨日は叱ると手に嚙みついて来てたから、知能レベルはかなり成長している。


「ぬる~ぬる~、ぺちゃぺちゃ~!きゃははは!」


と泡で遊んでいる姿は子犬ではなく人の赤ちゃんだ。


身体の次に頭を洗ってやり、苦労しながらもリンネの初めての入浴を終えることができた。


そうそう、シャンプーが目に入ってしばらく泣き喚いていたから、次はシャンプーハットを買ってやらないと・・・。

それに服は洗濯機で洗ったからとりあえず中学の時の俺のジャージを着させてるが、着替えも買ってやらないとな。

明日は街に買い物に行っていろいろ買ってこよう。

それにちゃんとしたものも食べさせないと成長に悪影響がでそうだしな。


・・・しかし疲れた。トイレと風呂を教えるだけでこんなに大変とは思わなかった。この分じゃ魔物と戦ったり、魔法を使えるのはいつになることやら・・・。


と、夕食のカップ麺をリンネの口に運んでやりながらぼんやり考える。


「ほら、あーん、だ。うまいか~?」


「うま!うまぁ~~!」


口の端に食べかすを付けて、満足そうに微笑む無邪気なリンネを見てると、得も言われぬ満足感に疲れが霧散していった。

20歳童貞にして、子育てって大変だけどいいものだな、と思った俺であった。


これまでの召喚獣の成長値


腕力 1 器用 4 俊敏 3 魅力 8 魔力 0 知力 10社会性 11


これまでに通報された回数 2 回

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る