37, The Decision

「あ・・あ・・あ・・・・・」

 目の前の光景を

 マリーさんが真っ赤に染まった長剣を手に、こちらへ向かってくる。

「あかり様っ」

 コルデリアちゃんに手を引かれ城を走る。

「待ちなさい」

 マリーさんの殺意のこもった怒鳴り声が後ろから追いかけてくる。

 階段を駆け上がり3階へ。後ろを振り返らないように、全速力で廊下を駆ける

 廊下のつきあたり、カーペットが途切れた先。豪奢な作りのほかの扉とは雰囲気の違う目の前の簡素な木の扉をコルデリアちゃんが開いた。

 薄暗い階段室に入り、扉を締める。電気はつけずにミシミシと大きな音を立てる階段を駆け上がる。

 そして、斜めになった天井と簡素な木の扉が並ぶ簡易な作りの廊下へ。

「こちらへ」

 反対側のつきあたり、厨房の暖炉へつながる、メンテナンス用の扉を開ける。

 私が中へ入ってハシゴを何段か降りると、コルデリアちゃんが中に入ってくる。

 いつメンテナンス用の扉が開いてマリーさんが入ってくるのか、冷や冷やしながらハシゴを下りきって、厨房にでる。

「マリー様はあの使用人の部屋を知らないはずです。またその廊下にある扉が暖炉に繋がっていることも知らないはずです。しばらくここは安全なはずです。」

 コルデリアちゃんは暖炉から出ると、ほっと息をしながらそう言った。

 そんなコルデリアちゃんの様子を見て、自分の心が決まった。

 私に身の回りのすべてを守る力はなかった。

 けれど、大事な人を1人守るくらいならば私にもできるはずだ。

「コルデリアちゃん、火をつける道具ってない?」

「ありますが・・何に使うのですか?」

 薪を暖炉にくべる。

「火をつければ絶対に暖炉からマリーさんは降りてこられないから。」

「かしこまりました。」

 コルデリアちゃんは私がくべた薪を整えると、油をまいてマッチで火をつけた。

 パチパチと音を立てながら暖炉に赤々とした火が灯される。

「それでさ、コルデリアちゃん」

「なんでしょうか。」

 コルデリアちゃんの手を取りまっすぐとその瞳を見据える。

「お願いしたいことがあるの。その・・嫌なことだと思う。けれど、私達が生き残るために、コルデリアちゃんにしか頼めないことなの・・」

「何なりとお申し付けください。私はあかり様のメイドですから。どんな命令でも何なりとお申し付けください。」

 私の考えを伝える。

 私達が生き残るにはおそらくこれしか道は残されていないから。

「かしこまりました。私におまかせください。」

 まっすぐと私を見据えながらコルデリアちゃんは、そう答えてくれた。

「ありがとう」

 コルデリアちゃんが木製の脚立を使って食堂の屋根裏へ消えていくのを見届け、私は食堂へ続くドアを開けた。

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