Day 5
26, Blackout
柔らかい日差しに目が覚める。
「おはよう」
「おはようございます。」
いつものようににコルデリアちゃんに着替えさせてもらい、コルデリアちゃんに案内されて食堂に向かい、コルデリアちゃんの作った朝ごはんを食べる。
「おはようございます。」
「おはよう、よく眠れたか?」
「はい」
「そうか、ならよかった。」
普段と変わらない様子のルドヴィカさん。
「エミリアさんも、おはようございます。」
「お、おはようございます。」
昨日事を気にしているのか、少し気まずそうに見えた。
「今日もまた図書館に言ってもいいですか?」
「もちろんです。」
未だ出てこないマリーさんとローザさん。
朝食を運んだ空のカートを押したコルデリアちゃんが戻ってきてしばらくした時。
食堂の照明が消えた。
突然の出来事に小さな悲鳴があがった。
「コルデリア、皆が食べ終わったらシャンデリアを下げてくれないか」
「畏まりました。」
そう言って皿を急いで空けようとするルドヴィカさんと、それに習う私とエミリアさん。
コルデリアちゃんが空いた皿をすべて厨房へ運んでいく。
「そろそろ頼めるか?」
残りの皿をカートに全て載せ、厨房へ戻ろうとするコルデリアちゃんにルドヴィカさんがそう頼み込む。
「畏まりました。」
コルデリアちゃんが厨房に消えてしばらくしたあと。
シャンデリアはその中心につながる太いワイヤーで天井からぶら下げられている。
そのワイヤーが伸びて・・・というか天井の中にあった部分を引き出すようにして、シャンデリアが床へ向かって降りてくる。
そしてまたしばらくして、コルデリアちゃんが戻ってきた。
「この光るガラス細工の部分は、しきたり通りに新しいものへ定期的に交換しているのですが・・」
そしてその手には、シャンデリアについているのと同じ電球を持っている。
「シャンデリアはいま点灯するようになっているんだよな?」
「はい。シャンデリアのスイッチはそのように」
ルドヴィカさんはおもむろに電球の一つを外すと、そのあらわになったシャンデリアの電極に手を触れた。
「あぶないです、感電してしまいます。」
「そんなことあるもんか。弱いしびれというか、刺激がくるだけだぞ。」
いや、それが危ないんだけど・・・
そう言葉を告げようとするも、ルドヴィカさんの思案気な声に遮られる。
「シャンデリアを光らせているとき、これを外して中に触ると刺激が来るはずなんだが・・・今はそれがなかった。」
「停電ですか?」
「停電とはなんだ?」
「電気が来なくなることです。電気というのが・・・先程ルドヴィカさんがビリビリするとおっしゃっていたものです。」
「それで、電気というのはなぜ来なくなってしまったんだ?」
少し考える。
この城の何処かで、もしくは城の近くに発電・送電のための設備があるはずだ。
「この城の電気を送るための設備がどこか壊れてしまったか、おそらくこの城の中かこの近くにあると思うのですが電気を作るための設備が壊れてしまったか、どちらかではないかと。」
「なるほど」
「それとあと、電気というのは少し危ないものなので、そんな直接触っていいものでは・・」
「それで、あかりはそれを直すことはできるのか?」
聞いてない・・・
そんな見えもしないようなものが危害を与えられるはずもない、だとかルドヴィカさんなら本気で思っていそうで怖い。
「見てみないことにはなんとも・・・ただ、電気を作る設備が壊れているのだったらわたしには手に負えないと思います。」
「そうか・・・あかりがつかなければ今はいいが、夜暗くなれば皆が不安がる・・・」
「そうですね・・・他に何か、ろうそくとかほかの何かは?」
「城の倉庫に一応用意はございます。」
「だがあまり明るくないし、何より危ない。だからできるだけ早くその、電気とやらを直したい。知恵をかしてくれ。」
「わかりました。」
さて、どうしよう。
まずどういった経緯でこの城に電気が・・・
「エミリアさん、の図書室に電気に関する資料ってありましたか?」
「そうですね・・私はまだ見たことがないですが・・確かにあるかもしれません」
「探してみてもらえますか?」
「わかりました。」
「私たちは、白の各部屋っを回って電気がつくかどうか確かめて見ましょう。もしかしたら何処かにまだ電気がつく部屋があるかもしれません。」
「もし全部の部屋がつかなかったら?」
「その時は、電気を作る装置、発電機が壊れてしまっていることも考えるべきかもしれません。」
「・・わかった」
図書室へ向かうエミリアさんを見送る。
私とコルデリアちゃんがとりあえず、1階と2階を。ルドヴィカさんが3階を調べることにした。
それでもダメだった場合は、コルデリアちゃんが4階、屋根裏部屋を回ってくれることになっている。
1階には厨房と食堂に倉庫、城の表玄関の大扉につながっている吹き抜けのロビー。そのほかに礼拝堂、謁見室など数百人規模で人が入れそうな部屋がある。
その全てがきちんと手入れをされており、今でもその役目を果たす準備ができているように見えた。
もっとも、これらの空間を埋めるだけの人はもうこの世界にはいないのだけれど。
「つきませんね」
一応地下の操車場も確認した。
1階の最後の部屋としてこのロビーも試したけれどやはりつかない。
ロビーの階段を登り2階へ。主にいくつか客間と王子の部屋、今私が使わせてもらっている部屋、そして図書室がある。
かつて一大勢力を誇った古の国。その城とその城下町をそのままここへ移したと言う。
王子の部屋には遠く及ばないものの、十二分に贅を尽くして作られている数多くの客間。ここにかつては多くの使者たちが滞在したのだろうか。
やはりどの部屋も電気はつかない。
そして、3階へたどり着いた時。
叫び声が聞こえてきた。
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