11 The Mechanism of Universe
コルデリアちゃんには申し訳ないのだけれど、観測データらしきものは読み方がよくわからなかったので読み飛ばす。
そして考察が書かれた部分を見つけた。
「このソラは、お椀をひっくり返したような形をしていると思うのです。」
「そして、月や太陽、そして数多の星々はお椀の表面を東から西へ向かって周期的に移動しているのです。」
「私はまだその法則性を見つけることはできていませんが」
「いつかそれを解き明かすために、日々ソラの観察を続けていきたいと思います」
そういえば、この世界のカレンダーはどうなっているのだろうか?
おそらくかなり計画的に農作物を育てているようだし、それなりに正確な何らかの暦は存在するはずだ。そして、暦は星の運行、つまり太陽や月、星の動きをもとにして作られているから、天文学も発達しているはずなのだけど。
「このお城を中心に地面ははるか遠くまで広がっています。城の周りは険しい山に囲われていて、その一部しか見ることとは叶いませんが」
「そこにひっくり返したお茶碗のような、球体を半分に切ったものをかぶせたのがこの世界。」
「だから、いつか世界の端まで行くことができたなら、わたしはソラを直接触ることができるはずだ。」
「一体どんな感触がするのだろう、そしてそこから見る星や月、太陽はどんな風に見えるのだろう」
まるで小さい子供が学校で理科を習う前に想像するような。
思わず頬が緩む。
「ふふっ」
コルデリアちゃんが作業の手を止める。
そして、私がコルデリアちゃんのメモを読んでいるのを見る。
「何処か変、ですか?」
ムッとした表情。
怒らせてしまっただろうか?
誰しも自分が真面目に取り組んで来たことを笑われるのは嫌だ。
誤解を解くため、というと少し違うけれど、私のありのままの本心を伝える。
「コルデリアちゃんかわいいなって」
「えっ・・・?」
毒気を抜かれたようなコルデリアちゃん。
「そしてね、」
ただ、これは教えてあげたほうがいいと思う。
「地球って丸いんだよ。」
「王子様は面白いです。」
コルデリアちゃんはまるで小さい子供が見当違いのことを言ったときのように。
柔らかい笑みを浮かべていた。
「どうして?」
想定外の反応に一瞬固まる。
「もしこの大地が球状なのだとしたら、球の下側にいる人はみな大地の下へ滑り落ちてしまうではないですか。」
正しいことを私の妄想だと思われてしまう。それが耐え難くて。
「えーっとね、重力っていう物があるんだけど・・・とにかく大丈夫なの。特別な力が働いて皆地球から落っこちたりしないから・・・」
後から考えてみれば、べつにコルデリアちゃんとの仲良くするにあたって、コルデリアちゃんの宇宙に関する考察を否定することは必要なことではなくて。
「コルデリアちゃんに宇宙がどうなっているか教えてあげるよ。」
「勉強させていただきます。」
地球が丸いこと、そして太陽の周りを公転していること。
地球が自転していること。そのためはるか遠くにある星々が動いて見えること。
月が地球の周りを公転していること。
そして月も時点をしているため
そして太陽の光と地球の影によって、地球から見える月の形が毎日かわること。
「それならば、太陽、地球、月の順番で並んだとき、月はすべて地球の影に覆い隠されて見えなくなってしまうのではならないのではないですか?」
痛いところをついてくる。
「微妙に回転する軸がずれてるから、満月になるんだ。たまにその並びが綺麗に重なるときもあって、新月っていうんだけど、そのときコルデリアちゃんが言ったみたいに満月の最中突然月が地球の影に入って真っ暗になる、ときもある。」
「そうなんですね・・・」
疑わしげなコルデリアちゃんの口ぶり。
「本当なんだけどな・・・」
「地球が丸いだなんてやっぱり信じられません。だって私たちはこうして平らな地面に、滑り落ちずに足をつけて居られているではないですか。」
私達の主張は平行線のままだったけれど、コルデリアちゃんは作業の手を止めておらず、いつの間にか平行光線を曲げるレンズは完成していた。
「どう・・・ですか?」
レンズの中、そこには不安そうにこちらを伺うコルデリアちゃんが精細に映し出されていた。
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