3.逃走と決意 『少女が試す、無心の戦い』

数日が過ぎた。

相変わらず補修は続いている。その日も四人は、訓練場にて補習を受けている。

彼女たちは相変わらず実戦的な学習を行っている。しかし今日の四人は、伝機も持たずに踊っていた。

いや、踊るというのは語弊がある。実際にやっているのは武術の演舞だ。

「森野君、肩が下がっているぞ! ハノン君は足が開いていない! イース君とエリス君はもっと動きに俊敏さを出せ!」

ヤマノ教師の声に、四人は言われたとおりに動こうと努力する。しかし、その動きはぎこちなく、まるで糸の切れ掛かった操り人形のようである。

「ほら、次の拳で声を出して、気合を入れろ!」

「「はぁっ!」」

「よし、そのまま構えて………休め!」

「「っはぁ!」」

四人は気合を声に乗せ、そのまま休めの体勢になった。

その様子を見て、ヤマノ教師は深く頷く。

「まあ、とりあえず一通りこなせるようにはなったな。四人ともそこに腰掛けろ」

四人は揃ってその場に腰掛ける。

「今のは、旧文明の武術の『クルティ』の型のひとつだ。もちろん、発掘されたのは一部の情報だけだから、現代人の解釈も混ざっての再現ではあるが……。洗練された体捌きはさすが旧文明の武術といえるだろう」

旧文明の技術や文化。それらは現代において一部発掘、再現されている。書物やデータはごくわずかにしか発掘されないのだが、それでもその一部から予測、解釈を繰り返し、それなりの形にすることが出来た。今ヤマノ教師が講義している旧文明の武術も、その中のひとつである。

「クルティは打撃が基本の武術だったようだが、これに加えてさっきの間接や投げ技の『ジトウ』と組み合わせれば、基本的な護身術にもなる。両方とも無駄の少ない武術だからな。マスターするには骨だが、役に立つ技なのだが」

ヤマノ教師はむっすりとふくれっ面の少女にたずねる。

「何か不満かね? ハノン君」

「不満も何も、こんなことしても、仙機術の前では何の役にも立たないじゃん?」

「ふむ、役に立たないか……。今の俺の話を聴いた上で、君はそういうのかい?」

「確かに身体の動きとか、無駄が無いみたいだけど、そんなちまちました動きじゃ、仙機術の前にはたいした効果は無いんじゃん?」

「なるほど」

仙機術には様々な術式が存在する。そいうよりは術式は無限にあり、それこそ考えうる様々な効果を生み出す術式を作ることは理論上可能である。

「一秒速い体捌きよりも、十秒速く加速する術を使ったほうがよっぽどいいと思うよ先生」

「まあ、確かに仙機術ならそれも可能だな」

ハノンの言葉に、ヤマノ教師は同意する。

「というか、座学やらされていたときも感じたんだけど、授業には将来役に立つか分からないことが多いじゃん。だからやる気無くなるんよ」

まだ入学していないとはいえ、ずいぶんな物言いを教師に向かってするハノン。

だが、ヤマノ教師は笑う。

「はっはっは、なるほどやる気がなくなるか。寝てばかりだった君が言うと、本気さが良く分かるよ」

嫌味とも取れる返しだったが、言い方にはトゲがない。純粋にその意見に対して、何か期待をしているようであった。

そして、何を思ったか、ヤマノ教師はイースフォウのほうを見て、こうたずねた。

「じゃあ、イースフォウ君、君はどう思う?」

「えっ?」

突然話を振られて戸惑うイースフォウ。

「いや、君もまあ、やる気の無さではハノン君に引けをとらなかったからな。どう思っていたのかなと思ってね」

これもまた、だいぶ嫌味に聞こえる質問であったが、だがヤマノ教師の声色は、別に怒っているわけでもなく、ただただ純粋にたずねている様子であった。

「えっと………」

イースフォウは考える。

(座学や仙機術以外の勉強に、意味があるのかどうか……という話だよね)

考えたことも無かった。

彼女としては授業に集中できないのは、別にそれらが嫌いなわけでもない。意味が無いと思ってるわけでもなく、ただただ自分が何をしたいのか分からないからである。

そう。彼女としては何かを覚えても、それをどうすればいいのか分からないのだ。ともなると、それに没頭する意味も見つからない。

座学だろうが実技だろうが、全て同じことなのだ。

(それをこなしたところで、身に付けたところで何の意味になると言うのかな)

そこまで考えてイケナイイケナイと、彼女は自分に言い聞かせる。

そういう考え方では、今やっている事すら意味が無くなってしまう。

まずはヤマノ教師の質問に回答しなければ。

(逆に考えよう、何の意味があるのかでは無く、なぜ敢えて学ぶのかだよね)

きっと彼女に対しても意味のあるものなのだ。これをすればきっと何かが起きるということだろう。だが反面、学び続けても将来の役に立てられるかどうかが分からない。

それこそ、イースフォウからどうにかして役に立てるように努力しなければならないはずである。

と、そこまで考えて、彼女はひとつ答えを見つかるける。

「ええと……」

「ふむ」

「自分でも、上手く行える自信はこれっぽっちもないんですけど」

「どう思ったんだい?」

「『将来役に立つかどうか』では無く、『自分がどう役に立たせるのか』を考えられれば、無駄なことじゃないのかなぁと……」

その言葉に、ヤマノはうんうんと頷く。

「まあ、悪くない答えだな」

「つまりどういうことなん?」

ハノンはわけが分からないという表情をした。

「ハノン君はつまるところ、仙機術に何の役にも立たない勉強は、意味がないって言いたかったんだろう?」

「そう言ったじゃん」

「悪いが、確かに役に立たん。ぶっちゃけ歴史やらなんやらは戦闘にまったく関係しないし、体術程度では仙機術の戦闘の足しとしては微々たる物だ」

だがな、とヤマノは続ける。

「もし同じ実力の使い手がいたら、勝敗を決めるのは『いかに仙機術以外の技を仙機術に応用したか、工夫して取り入れたか』なんだぞ? 無駄な事を無駄なく使う奴、上手く取り入れる奴が実は一番強くなれるのさ」

「…………」

ヤマノの一言一言をハノンはじっくりと吟味する。だが、やはり納得いかないのか、ムスリとした表情は崩さなかった。

その様子を見てもなお、ヤマノ教師は笑って話す。

「まあ、そんなに簡単には分からんわ。いつかもう一歩前に出たいときに、それまで学んだいろいろなことを活用する事になる。人は案外、いざという時はただの一歩を踏み出す力を求めるのさ。十を実行する術式では無く、一の足しに成る知識と技術だ。……だからまあ今は役に立たなそうでもこなしておけ。使おうと思ったときに持っていれば、それはきっと役に立つからな」

イースフォウも、実際にはそこまで理解できてなどいなかった。役に立たせることが出来ればいいが、自分はそこまで器用ではないと思う。どうすれば役立たせることが出来るのか、グルグルと考えが纏まらないままであった。




補習授業が今日も終わる。ここ数日同じ話だが、その日も訓練場を使う許可がイースフォウ達に下りていた。

その日はとにかく実戦に慣れるために、イースフォウは三人と模擬戦を続けておこなう事にした。

「イースちゃん! そのまま防御しながら右に走って!」

イースフォウは言われたとおりに走る。目の前には自由自在に鎖を振り回すハノン。鎖は蛇のようにうねりながらイースフォウに襲い掛かる。

「っつ!」

鋭い攻撃ではあったが。彼女は目の前に飛んでくる鎖を全て弾き飛ばす。

だが撓る鎖は更に軌道を修正して、イースフォウの四方を包囲した。

「前の鎖にだけ集中して、ほかはダメージ覚悟で!」

言われたとおり目の前の鎖を突っ込んで弾き飛ばす。すると、最短で突っ切った為に左右からの攻撃に対しても余裕が生まれている。

「今よ、左右の鎖を続けて弾いて!」

言われたようにイースフォウは剣を振るう。問題なく弾き飛ばせた。

しかし、残された背後の鎖がイースフォウを打つ。

「っく!」

一瞬息が出来なかった。しかしそれでも、全く動けない訳でhな愛。

構わずイースフォウは次の手を振るう。

「そう、そのまま一気に間合いを詰めて!」

(うん、私でも見えていた攻撃パターンだわ!!)

このまま跳べば、ハノンの懐に飛び込める。

捨て身の攻撃ではある。だが、いつものイースフォウならばここまでたどり着く前に動けなかっただろう。迷いが無ければイースフォウの力でも、ここまで歩を進めることが出来るのだ。

見えた!

と思った瞬間、イースフォウの動きがガクリと止まる。

「……鎖が」

イースフォウの腰の部分に、鎖がまきついていた。背後からの攻撃は、打撃ではなく捕獲を狙ったものだったのだ。

「でも、森野がそこまで動きを言ってくれれば、こっちもどうすれば良いかが丸分かりじゃん」

ハノンがあきれた表情でそう言う。そのまま鎖を解き、自分の手元まで回収する。

どちらかの動きが止まったら終了というルールだったのだ。

少しはなれたところから、森野が頷く。

「確かにそうだけど、イースフォウはどうだった?」

森野の問いかけに、イースフォウは考える。

確かに、自分で考えない分、変に迷わない。迷わないで戦えば常に最善、最短の行動が出来る。

「そうですね……いつもよりも、前が見えた気がしました」

いつもはすぐに見えなくなるのだ。それがない分、まともに手を進めることが出来た。

「安心して戦えたから、囲まれたときも最悪の選択をしないで済みました」

「ま、でもハノンの言うように、敵に動きが全部筒抜けだから、まったく意味がないんだけどね」

「で、もう六戦目だけど、森野はいったい何を考えているのさ」

ハノンが森野に尋ねた。

イースフォウはハノンとの戦いの前にも、森野ともエリスとも模擬戦を行っていた。森野のときはどこにどう攻撃するかを宣言してもらいながら、エリスのときはハノンのときと同じように動き方の指示を受けながら。途中休み休みではあるが、ずっと戦闘続きである。

「ん~、まあすぐに効果なんて出ないと思うけどね、こうしているうちにイースフォウが自分で行動できるようになるかなって思ってるのよ」

「……私が自分で?」

出来るのだろうか。ここまでずっと森野の指示で戦ってみたが、イースフォウとしてはまだ自分一人では迷ってしまうように感じる。

むしろ、この状況に慣れてしまって、二度と自分で動くことが出来なくなるのではないかと、彼女としてはそんな想像もする。

だが、森野はクスリと笑う。

「大丈夫よ、イースフォウはちゃんと自分で選ぶことが出来るって」

イースフォウの考えていることを読み取り、森野が話す。

「よく思い出してみて。今の戦闘は確かに私の言うとおりに動いてくれたけど、本当にそうだった?『私もそう思っていた』って考ながら戦えたんじゃない?」

「……あ」

言われてみれば確かにそうだった。森野の指示と、自分が進もうと考えた先が重なっていた。

イースフォウは森野に指示されながらも、自分も先読みして同じことを考えて、そして戦えていた。

「私はね、指示してるんじゃないのよ。イースちゃんが多分考えるだろうなぁって動きを、ただ単に叫んでいただけなのよ」

イースフォウにも身に覚えがある。森野の指示は自分の考えと真逆になることは殆どなかった。彼女もあまり深くは考えていなかったが……、森野がイースフォウの考えを先読みしていたからだったのだ

「だからね、イースちゃんは思ったまま動けば、迷うことなんて無いのよ。間違いじゃないのよ」

イースフォウは森野の言葉の意味を、じっくりと考える。

「それは……もっと直感を信じろってことでしょうか?」

しかしその問いかけに、森野はうーんと唸る。

「確かにそういうことには違いないんだけどねぇ。……イースちゃんは、『直感を信じることを考え』ながら、迷わないで戦える?」

「……なんか難しいですね」

だが、確かに言われてみれば難しく思えた。いろいろな手を考えた後に、『直感はどれか』とか考えて、結局迷ってしまうだろう。

「確かに私は、直感を信じて戦おうと考えすぎてしまうかもしれません」

「あーもうっ! 面倒だなぁ!」

ハノンが頭を抱えて叫ぶ。イースフォウのぐるぐる回る思考に、イラつきを隠せずにいた。

「こうさ! もう何も考えないで戦えないの? 目の前の敵を倒すだけなんだから、まずは変な考えは全部捨てちゃった方がいいじゃん!」

その言葉に、エリスも頷く。

「確かに、技術や基礎はイースさんは申し分ないのです。ともすれば、無心で剣を振るったほうが強くなるのではないでしょうか?」

「だってさ、イースちゃん。どう思う?」

「無心ですか……」

イースフォウは再度考える。

迷いとは、考えすぎの思考が生み出したものでもある。ならば初めから何も考えなければ、自分の体の思うままに動かせば、迷い無く戦えるのかもしれない。

「確かに、一理あるかもしれません」

あえて何も考えずに戦う。イースフォウは考えたことも無かったが、試してみる価値はありそうだ。

どうせこのまま同じことを繰り返していても、彼女が成長できるか怪しい。イースフォウとしても思い立ったら吉日、やれることはやってみるのも良いかもしれないと思った。

「ちょっとやってみたいと思います。森野先輩、付き合ってくれますか?」

その言葉に、森野は少しうれしそうに笑う。

「いいわよ?」

「お願いします」

森野とイースフォウは訓練場の真ん中のほうに移動した。




結果としては最悪だった。

イースフォウはまったく微動だにしなく、そのまま戦闘は終了したのであった。




「――ま、そりゃあ何も考えなければ、人は動かなくなるさ――」

帰り道、クロは一言目にそう言った。

「――何も考えない人が動くとしたら、それは何者かに操られている状態くらいなものさ。まったく無心で戦おうなんて無理話さ――」

「――そうねぇ。私もクロに同意するわ、フォウ。あなたに必要なのは、考えないことではないわ――」

「……わかったわよ、やってみたし」

クロとヒールの言葉に、イースは口をとがらせて答える。

「――まあ、あの森野って奴は、それで駄目なことは分かってたみたいだがな――」

「……そうだったの?」

イースフォウは意外そうに聞き返す。気付かなかった。森野も彼女に付き合ったし、肯定的な意見として採用したのかと思ったのだが……。

「でも、だったらあんなことに付き合ってくれなくても良かったのに……」

しかしそのイースフォウのジャンが絵を、ヒールが否定する。

「――いえ、違うわフォウ。森野さんは意味があると思ったから、付き合ってくれたのよ――」

「ヒールはクロと違う意見なの?」

「――いいえ、クロと同じ意見だけど、でもあの時付き合ってくれたのは、フォウのためになると思ったからよ――」

「……? ごめん、分からないよ」

どういうことなのか、イースフォウには理解しかねた。駄目だと分かっていることをやらせるのに、何の意味があったのだろうか。

そんなことは、速く止めさせたほうがいいのではないだろうか……。

そんな風に考え込むイースフォウにヒールはそっとつぶやいた。

「――フォウ、最近いろいろと考えてるよね――」

その言葉に、イースフォウは首をかしげる。

「……考えすぎるのは、昔からの悪癖だと思ってるけど」

「――ううん。ちょっと前まではフォウは考えて無かったわよ。考えて考えすぎて、そして考えてなかった。自分から何かしようとしなかった――」

「それは、今でもあまり変わらないと思うけど……」

結局自分から進んでなんて出来やしない事に、イースフォウは悩みを抱えている。何をして良いのかさっぱりなのだ。どのように進んで良いのか、この先に進んで良いのか、いつも分からないから進まないのだ。

だが、ヒールは笑う。人口で作られた知能だが、それでもクスクスと笑う。

「――フォウ――」

「なに、ヒール?」

「――スカイラインと戦いたい?――」

一瞬、イースフォウの息が止まる。

だが、それも一瞬のこと。静かに息を吐いて、そして静かにつぶやく。

「戦いたくないわ。でもただでやられたくも無い。森野先輩も、エリスさんもハノンちゃんも、私のために手伝ってくれている。無様に何も出来ずに負けるわけにはいかないじゃない」

スカイラインは強い。だから、自分はせいぜい出来て一太刀切り込む程度。だが、何もしなければそれすらも叶わないだろう。

「恥をかかないくらいにはやってみるわよ」

だが、どんなに訓練したところで付け焼刃だ。恥をかかないわけ無いだろう。

「――無駄な努力にならなきゃ良いな――」

ヒヒヒ、とウロが笑う。まるで、イースフォウの思考を読んでいるような言葉であった。

それでも、イースフォウは言う。

「みんな、私が少しでも戦えるように手伝ってくれているのよ。それには答えるわ」

「――そうだな。お前が少しでも戦えるようにだな……――」

やはり嫌な笑い方をしながら、クロが呟く。

だが、その呟きで、イースフォウは気付いてしまう。

「……そうよ……」

そう、けして勝つための訓練ではないのだ。

あくまで、少しでも対抗できるように、という訓練なのだ。

少しくらい戦えたとして、耐えられたとして、一太刀あびせたとして、その結果に何があるというのだ。

ああ、今心の奥底に疑問が生まれてしまった。

(その訓練に、何の意味があるというのだ……)

「――クロ、黙りなさい。あなたの言い方は、明らかに意図してフォウを追い詰めているわよ?――」

「――っへ、怖い怖い――」

どこか冷たい声で、ヒールがクロを黙らせた。

そして、イースフォウに語りかける。

「――フォウ、今あなたが気付いたのも真実よ――」

気付いたモノ。それはこの戦いの意味であろうか? そのくらいなら、イースフォウだって初めから気付いていた。

だがしかし、彼女は改めて思い起こしてしまったのかもしれない。

『真実』と言う言葉に、イースフォウは暗く沈んだ気持ちになる。

「……そう」

だがヒールは、それでも、優しい声でイースフォウを諭そうとする。

「――でも、ひとつの答えだけで全部を決めないで。そこで立ち止まったら、あなたはまた考えもしなくなってしまう。それだけは、いけないことなのよ――」

「……そうね」

「――あなたは、スカイラインに嗾けられたとしても、戦うことを選んだし、森野さんに進められたとしても、一太刀を目標に掲げたわ。大丈夫、前に進んでいるわ――」

「……そうかな?」

実感はわかなかった。ヒールの言葉は理解できた。

だが、クロの言葉は、改めて思い起こしてしまったものは、心にこびりついたままだった。





その後、さらに数日間補習授業が続き、授業後に模擬戦の訓練をする。そんな日常が続いた。

やり方を変えた補修に対し、四人はそれなりに真面目に取り組んだ。森野はもともと真面目に受けていたし、参考書を読む間もないためエリスも言われた事をこなした。ハノンに関しては文句を言いっぱなしであったが、体を動かすことは嫌いではないのだろう、カリキュラムをこなしていた。

さて、そんな中イースフォウであるが、彼女も相変わらず時折ボーっとしつつも、問題なく補習をこなした。もともと、やる気が無いだけで、補修自体をサボるつもりは無いのだ。そのあたりはヤマノ教師も理解していたのか、時に注意し時に促した。

そして、補習授業も終わり、公開模擬戦が残り一週間と差し迫った日のことである。

イースフォウが行方をくらませた。

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