summer
季節はすっかり夏になった。夜でも鳴く蝉の声が変に耳に張り付く。うるさいから、夏は嫌いだ。うるさいからだと、思いたい。
今日は小テストの点が異様に悪かったから、居残りしていた。他にも何人かいる。もちろんあいつもいる。頭良いくせに。
結局私は予備校が閉まるまでいた。今日のテストは難しかったのか、残っている人も多かった。あいつはまだ残っていた。満点だったくせに、皮肉なものだ。
やれやれ、と塾を出た。湿った風をわずかに感じる。前にはあいつが歩いていた。
しばらく歩いていると、私は思わぬアクシデントに遭遇してしまった。
「詩織!」
爽やかな、普通の男子より半音高めの声。この声の主は、元彼だった。
「ま、雅人…」彼の声が大きすぎて、あいつにバレてしまった。目を細めて見てくる。
「久しぶり!元気だった?」と、彼は聞いてくる。彼とは嫌な別れ方をしていなかったので、今でもこうして喋るのだ。だが…「ちょ、ちょっと今忙しくて早く帰らなきゃいけないんだ、ごめんね」そう言って私は足速に歩いていった。
向かいにはあいつがこっちを向いて立っていた。
「何でいつも遅いのに、後ろにいんの。」「き、今日は用事があって…」あいつは特に気にすることもなく、「一緒に帰る?」と言った。
「え?」
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