spring
私は、今月から高校3年生になる。まぁ、要は受験生になるということだ。前々から両親に言われ続けていた予備校の件は、私が折れて来週から行くことになった。正直だるい、というのが本音だ。でもまぁ、どうせすることなんだから行っておいても損はないか、と思った。
学力はそこそこ高いほうだった。だが別に学年で1位になるとか世に言う″天才″とかではない。それでいい。そこまで目立つ必要なんてないんだから。
♦
今日は初めての予備校だ。塾は行ったことあるけど、田舎にいたから…これから行くあの有名な予備校は一体どんなところなんだろうか。
人が多い?むさくるしい。
頭の冴えた人ばかり?それはそれで嫌かも。
席についた。想像していた部分と一致しているところもあったが、一致していないところもあった。確かに人は多いが、無駄にうるさい人が多い。
東京の高校に入学した時もあまりの格差に唖然としたのを覚えている。頭の良い奴はとことん勉強し、遊びには目もくれていない。うるさい奴は勉強は辛うじてしているものの、授業している意味がないのではと思うくらい駄弁っている。
予備校で他校からも来ているから余計圧倒されてしまい、授業前だと言うのに軽くノイローゼになりそうだった。
イライラする、集中ができない。
「うるさい人は、嫌い、だ。」
「だよね。」
__えっ?今声出てた?てかあんた誰?
ふい、と横を見ると、そこには如何にも優等生というような雰囲気の漂う黒髪メガネがいた。隣の席の人らしい。少し驚いて、じっとそいつを見ていると急に鋭い目付きで睨んできた。
「何ですか。ジロジロ見ないでくれない。」
「…」
は?何こいつ。自分から返事しといて人に見られたらガン飛ばすって、腹立つんですけど。まぁ、確かに私が独り言言ったのも悪いですが…
チラッとテキストに書いてある名前を見る。
「(速水…律、か…)」
道理で隣なわけだ。私の名字は早坂、だから。座席はクラス内で名前順らしい。
私は一番上のクラスに辛うじて入ったが、こいつはどれくらいのやつなんだろう…
授業が終わり教室を出ると、ふと教師の会話が聞こえてきた。
「速水律、いましたね…」
「はい。恐らくこの校舎、いや我が予備校でも1位2位を争うくらいになるでしょう…」
何、あいつそんな頭良いの?大手予備校トップクラスにも入る奴と隣なんてびっくりだ。見た目からして頭良さそうだもんな…
ちょっと感動した。そのうち、わからないことがあれば聞こうとも思った。
一番上のクラスだし、頭の良い人はたくさんいるのに、何でそいつに執着してしまうのだろう。睨まれた筈なのに。きっと、ずば抜けて頭が良いからだ。そう言い聞かせた__
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