真実は壊れやすい


この世界での魔法について、俺は思ってしまう事がある。何が魔法だ!っと。

元々は科学が発展したこの世界において魔法なんて非科学的な物は存在し得ない筈なのだ。

しかし、俺は科学者って訳ではない。魔法の存在を全否定したい訳でもない。

ただ、俺が許せない事、それが...

この世界においての魔法と言う存在の定義である。

科学者達が必死こいて開発に成功した認知を世界全人類の頭に植え込む事により、実際には存在しない事でも、存在していると認識する事にしてしまう。それが魔法。

認知を頭に植え込む事に成功した時点で開発に成功していた魔導電気により、生活をする上でかなり重要な電気系統の設備も大幅なパワーアップをしたし、一人一人に対する一回の情報量の取得も大きくなって、便利な世の中になったのは事実である。

だが、言わば空想上の産物を皆で正当化して、熱いものなら熱いし冷たいものは冷たいと頭が勝手に反応してしまう様にしただけじゃないか?。

つまり、魔法と言う名称をした科学の産物。俺はこれを魔法と呼ぶ事が出来ないのである。


「そうは思わないか?チュー助よ?。」


暗く静かな下水道を一緒にお供してくれている鼠に語りかける。


チュー、チュー。


鼠にしては、鳴き声がここまでチューとハッキリ聞こえるのは珍しい。だから俺はこいつにチュー助と名付けたのだ。


チュー、チュー。


それにしても、そこらの鼠と会話なんて...俺は人としてどうなのだろうか...


はぁぁ〜〜〜。


下水道の辺りにため息が反響したのか、自分のため息が耳元近くで吐かれた様な気がしてゾッとした。


「こんにちは〜...」

「のわぁっ!!」


いきなり背後から声がするんだもん、自分のため息とか...は...恥ずかしい...


「い、いきなりどうしたっ?てか、誰だよ!!」


なんっっと言うか...何だ?辺りに人が居たなんて全く以って気づかなかったんだが?


「そんなことないですよ〜?貴方の横で話聞いていてあげたじゃないですか?」

「いんや、ありえんね!!お前がチュー助な訳...っ!!」


ウォーレンは咄嗟に目を隠した。

言い訳を言わせてくれ、周りが暗くて分からなかったんだ。この人が全裸な事に...

とても純白で綺麗な身体をしていた。上からボンキュボン、藍色の髪をした癖っ毛強いロングヘアーにくりくりとした目、とても紳士な俺じゃないと完全に襲ってるね!間違いない!!


「...信じてませんね?」


暗くてよく見えないけど頰を膨らませているのであろうくぐもった声が聞こえた。


「信じる信じないの前に服を着ろ!!全国民男性の毒だから!!」毒というよりはサービスってとこか。


「私はアンジィ・ナミ、貴方にチュー助と命名された女で、7:3の鼠人間です。」


アンジィは自身の頭上に指を指した。

そこには何処かの夢の国にいる◯ッ◯ー的な何かを彷彿とさせる耳が...あったのではなく、簡易的ステータス放映機を使った時に現れる自己プロフィール機能のステータスバーが出ていた。

アンジィの指がバーを下に引くと、俺の目の前にアンジィのプロフィールが出現した。


アンジィ・ナミ

種 鼠人

年齢 175歳

人間7魔力3

職業

上位ドクター 8

下位変化師 1


驚いた。年齢は純人間よりも寿命が多いという事で納得がいくのだが、それよりもドクターが8もある時点で相当な人物である事が分かる。

この世界では職業と呼ばれるものを、自身の努力次第で何個も取得可能なのである。その職業にもランクが存在して、1〜5が下位、6〜9が上位、10でマスターと表記されるのである。

ちなみに、病院で働いているお医者さんは平均5〜6以上の人達である。


「これで信じてくれたかな?」

「信じたも何も、上位ドクターってアンジィお前ってかなりすごい奴だったんだな。」

「そこじゃありません!!変化師をとってるから鼠にもなれるって事!!」


アンジィはよほどチュー助だった事を信じてほしいらしい...。プロフィールで鼠人って時点で信じているのにしょうがない奴だなぁ。


「分かった分かった。信じるから。」

「んじゃあ、チュー助って呼んで!!」


よく分からんが結構気に入ってくれてるんだろう。可愛い奴だ...

っと待て...


「その前に服を着ろぉぉぉ!!」

「服なんか持ってないもん!」


...まじかよ。


んで、俺はパンツ一丁になってしまったという事です...。


「チュー助はどうして見ず知らずのこの俺にプロフ見せたんだ?悪用されるかもしれないのに?」


チュー助はかなり深刻な顔をしていた。


「やっぱり覚えてはいないんだね...。」


意味が理解できなかった。やっぱりも何も会うのは初めてだし。実は衝撃の幼馴染的な?ってか俺は自分の親ぐらいしか知り合いなんていないし...。


「クラストはここに来て1ヶ月間位ずっと死人の様に動かなかったからね...。」


っえ、どういう事だ?


「今日初めて、息を吹き返した様に動き始めたんだ。」


待て待て、頭が追いつかない...。


「っと、ちょっと待て。それだとまるで俺はここに来て1ヶ月経ってる?どうしてここにいるかも分からないのに?ってかなんで俺の名前を知っている?」


全く訳わからない。確か俺は魔科警察の人に恥ずかしい思いをして、居てもいられなく走って逃げて...それから...


「クラストは記憶欠陥。それもかなり複雑な。」


...。


「貴方が良ければ、記憶を取り戻す事ができますよ?その場合私もその記憶を共有する事になってしまうけれども...。」

「で、できればお願いします。」


自分自身どうしてこうなっているのか分からないけども、謎も色々あるけど思い出せないし...

アンジィは俺の事をその豊満な胸に抱き寄せた。


「職業 ドクター。今からクラストの記憶に私が入り込んで一つ一つの出来事を修復していくから、ちょっと辛いし例え残酷な記憶だとしても思い出した事を後悔はしないでね。」


記憶修繕。


とてもフワフワした心地だ。俺が体験した記憶が戻ってくるのを感じる。その中では唯一覚えていたエクス・ギャリバーを手にした時の事とか盗まれたとか、恥ずかし逃げた事も含まれていた。そして...


「う、嘘だろ...。あいつらが...あいつらが...」

「私も体験したから分かったけど...とても悲しい、虚しい。」


信じられなかった、信じたくなかった。でもこれが俺の記憶なら俺のやる事は一つ...。


「俺、行ってくる。」

「うん。そう言うと思った。けじめをつけるんだね。」

「あぁ。」


記憶を思い出す。は、俺の記憶を第三者視点で思い出す事が出来たのだ。そのせいで分かってしまったのだ。知らなければ幸せだったのにと思われる出来事が...。

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