20 切なく揺れ動く日々 10/3~10/10
〇2005年10月3日(月)
今日あやねが「大里君と付き合うことにする」って言ったの。もう意味がわからなかったよ。あやねはその過程をくわしく教えてくれました。
あやねの考えは、絶対に間違っている!
理由は、大里君がかわいそうだから、弱っている大里君を助けたいからだって。
大里君に対して恋愛感情があるかわかんないのに、また付き合うっていうんだよ。びっくりしたよ。それって一時的な助けだよ。絶対解決にならないって。「どうしたの?」って何回も言っちゃった。だってあやねらしくないんだもん。
でも、私の言っていることわかってくれて嬉しかったよ。長時間かけて考えるって。よかった。安心した。自分を選んでもらえる可能性が残ったのもあるけど、あやねがあやねらしくいられることが嬉しかった。
ただ、長時間かけて考えるということで、あやねは私とも大里君とも、ちゃんと距離を保つことにするって。だから私は、今日から「好きだよ」って言っちゃいけないんだね。つらいな。今日さ、「あたしがいままでに出会った素敵な人ランキング一位だよ」って言ってくれたんだよ。嬉しかったけど、それなのに、どうして私たちは進展しないんだろう。
あと、大里君に怒っちゃった。怒り過ぎたね。反省。たぶん人生の中で一番怒ったな。ひとり、帰り道に自転車をこぎながら。
だってさ、彩音に考えてもらうために距離を置くと言っておいて、それを私にも強要してきておいて、自分はこっそり、つらいよ、苦しいよ、助けてよってアピールしていたんだよ? そんなことしたら、優しいあやねは大里君のそばにいてあげようって思っちゃうじゃん。
今回の顛末はこれが原因でしょう? とはいえ、冷静じゃなかったね。あやね、大里君ごめんなさい。
〇2005年10月4日(火)
あやねがメールでさ、「新たな気持ちで美紗都さんと会える」とか「前と違って大里君と会うのも嬉しい」って言ってたね。「美紗都さんのおかげでここまでこれました!」って言ってたね。
それで気づいた。気づいちゃったんだよ。
私はあやねに愛してもらうために、頑張ったことがないって。
9月14日だっけ? 私とあやねがなんとなくだけど、お互いの想いを伝えあっちゃった日。あの日から、あやねは暗い暗いに闇の底に落ちちゃったの。そのとき私は「絶対にあやねを暗闇から助け出す! それが出来なきゃ絶対後悔するから」って言ったんだ。
つまり私は、あやねのことを友達として、親友として支えてきたんだよ。
だから、あやねは私に対して「大切」「素敵」とは思うけど、「好き」「愛してる」にならないのでは。そして、そうさせているのは私自身なのでは。
なんかね、最近あやねに選ばれる気、全然しないんだ。あやねはもう、私に恋愛感情もってないんじゃないかって、そんなことばかり考えちゃう。
でもね、私はあやねに愛されたいということよりも、あやねを暗闇から助けだしたかったんだよ。愛されることより、あやねを助けることを優先してしまったんだ。損しているよね。でも、仕方ないよ。これが本音なんだもん。このことが理由で選ばれなくても……あやねの力になれたんだからいいよね。……って納得できる? ほんとうに?
これって自己満足だよ。お願い。私の気持ちに気付いてください。
〇2005年10月5日(水)
私は部活を休んでしまったから知らなかったけど、今日は大里君の部活復帰日だったんだね。あやねは大里君と何か話としたのかな? 気になるな……。大里君、まさか急遽日程を切り上げて部活に復帰するとは。ほんとうの理由を、部員たちは誰も知らないんだね。
今日、私は宣言することにしたよ!
あやねが元気に戻ったいま、これからはあやねに愛してもらえるように努力するよ!
あやねの言う、「(いまは)恋愛感情で接するのはなしにしよう」っていうのを考慮しながら。でも難しい……。いい策ないかなー……。
とりあえず、あやねが大里君を選んだら、私を失うことになるんだよって言おう。ちょっと脅し文句のように感じるけれど、でもこれは事実なんだよ。あやねが大里君と付き合うとしたら、私とあやねは本当に離ればなれだよ。もうメール禁止だし、二人で会って話すこともないよ。大里君の相談だってきいてあげられないよ。……さみしいよ。そんなの絶対にいやだ!!
そんな選択しないでよ。本当に悲しいよ。もう一回あやねが大里君と付き合うなら、私が少しも頭をよぎることがないと確信できる限りは、やめてほしいな。だってそうでしょう? 私を失って、後悔しないなら付き合えばいいさ。
……って、こんなことあやねに言えないよ。なんか、すごい嫌なやつじゃんか……。
〇2005年10月6日(木)
あやねと公園で夜を明かした日からちょうど2週間だね。
大学の帰り道にね、あの公園から見えるネオンを見ているとそのときの感情が蘇ってきてね。心がきゅっとするんだ。
「あの日までは、間違いなくあやねに愛されてたな」って。
あやねが大里君と別れてから、あやねに愛されてる自信ないよ。大切に思ってくれているのは、本当によくよくわかるけれど。
あと、今日はちょぴっとメールしたよ。
部活が終わったあと、駅まで大里君と二人で帰ったらしいね。ずるい。ずるいよ。
一転、あやねと大里君のほうが会う時間が長くなっちゃった。大里君の、休部解除前倒しは大成功していることになるよね。なんだかなあ。納得いかないよ。こんなのずるくない?
あやねと話がしたいよお……。
起死回生になるとは思えないけれど、明日はあやねにミスチルのCDを貸す日だね。
〇2005年10月7日(金)
今日は大里君と、部活復帰後はじめて会ったよ。
一緒に帰ることになったよ。途中からだけど。
大里君は、あれだけ「美紗都が彩音を諦めないのならば、仲良くなんてできない」って言ってたのに、普通に接してきたよ。
……、どういうことなの?
大里君が何を考えているのかわかんない。もう、私にとって大里君はどうでもいい存在になりそう。あとさ、あやねから明日大里君と遊ぶってこと聞いたよ。
ちっとも待ってないじゃん! なんなのそれ!
ウソつきじゃんあいつ。
あやねはそうはまったく思わないみたいだけど。
仕方がないから、まだ言う時期じゃないのに、あやねに私が言っておきたいことを全部話すことにしたよ。シンプルに言えば、いまも好きだってこと。でも、いまこんなことしても意味ないのに。
大里君待ってくれないんだもん。……ってか当たり前か。
大里君って戦略的なんだよね。まさに、あやねがその術中にはまっている感じ。なんか……大里君の思い通りにいきそうだな。もう無理なのかな。あやねが大里君のところにいってしまいそうだよ。
今日は、久しぶりに大学を出るところまではあやねと一緒だったね。雨が降ってきたから、二人であいあい傘だったね。
でも、だからなんなんだろう。
〇2005年10月8日(土)
昨日、あやねが大里君と遊んできたよ。
大里君、あやねの家に泊まったのかな。だってあやね、部活ちょっと遅刻してきたよね。どういうことなの。気になるけど、聞けやしないよ。
95%くらいの確率で、大里君のところに戻る気がして仕方がないんだよ。
「あっ、今日はね。本当普通だったよ! 普通に楽しかったよ!」だって。
普通って、なに!?!?
へー。買い物したんだ。
気づいたよ。私にはあやねと大里君の関係をどうにかすることなんてできないんだ。私はかなり不利だと思う。
いま、私がすること。
もっと、あやねに愛してもらえるような人になること!
〇2005年10月9日(日)
そういえば、デートしたい発言しちゃった。私あやねとデートしたいよって!
あやねは、なんとも言えない回答。どっちとも取れる回答。
いやなの? 謙遜なの? どっちなのー!!
とりあえず、12月までもう今回の話はしない。12月にはあやねとどこかに出かけたい。今年の終わりだし、二ヶ月以上待ったあとなら今回の話をしてもいいよね? それまで大里君と付き合っていませんように。
あと、あやねと3時までメールしたね。
あーあ。また愛してる発言一回しちゃった。スルーだった。反応なかったね。当たり前か……。そんなこと言われても、あやねは困るんだよね。
でも、公園であやねをぎゅっとした話をあやねの方からしてきてくれたの。すんごい嬉しかったんだから!
今日は部活のときさ、休憩しているあやねと目があったね。
にこっとしてくれるだけで、私はとても嬉しかったの。
ミーティングのあとにほんの少し話したけど、それよりも、あのアイコンタクトしたときのほうが嬉しかったな。やっぱりあやねの表情、はっとさせられちゃうな。
〇2005年10月10日(月)
今日部活の帰りに、大里君が「今日の部活ほんとうつかれたなあ」っていって、思わず「ほんとう、つかれるよね!」って私が答えて、二人で苦笑いしたのが印象的な出来ごとでした。だって、今日はあやねがいたんだもん!
なんだかんだ、一緒に帰ることになる私と大里君。へんだよね。会話はあんまりないんだけどね。今日は大里君、2回も大きくため息ついてたよ。
今日、あやねとなんか話してたけど、あんまり楽しそうではなかったもんね。彼も困っているんだね。
大里君と私は接した方がいいのかな。こんな風に一緒に帰っていたら、元に戻れたりするのかな。そうしたら、大里君はあやねをあきらめたりしてくれないかな。
とりあえず、大里君に余計なことをいうのはよそう。
そもそも大里君を追いこんでいるのは私なんだから。
あやねとは、今日は一回アイコンタクトしただけだったね。こんなものなのかな。あやねは部活をサボってばかりだから、次会うのは金曜日か。遠いな……。話せなくても、今日はあやねのこといっぱい見れて幸せだったな。
はやく金曜日になーれ!
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