囚人野球の熱血先生ウォォォォ!!!

ちびまるフォイ

刑期を短くしたくないのか!?それでも囚人か!?

「かっとばせーー! 囚人番号102!」


さぁ、囚人野球も9回の裏になりました。

バッターボックスには殺人で捕まった囚人番号102番。

かつて使っていた凶器:バットで命ではなく、点数を取ることはできるのか!?


現在の点差は0点!

ここで点を取ればサヨナラとなり、獲得点数分の刑期が短くなります。


「さぁ来い! 打ち返してやるぜ!」


「フフフ、お前にこの消えるジャイロボールが打ち返せるかな!?」


ピッチャー囚人番号94、振りかぶって……投げました!


 ・

 ・

 ・


試合が終わると、監獄にはため息がこだましていた。


「はぁ、今回も点を取れなかったなぁ。

 これじゃいつまでたっても刑期が短くならないよ」


「とはいえ、相手もこっちも実力は拮抗している。

 そうそう簡単に点数を取れるもんじゃないだろ」


毎回、囚人たちの間で行われる「囚人野球」では

収容されている独房ごとにチームが組まれて試合をする。


勝利したチームには、その点数分の刑期が短くされるので

どの囚人もやる気になって取り組むが、ここずっと点数は同じ。


「……最初はよかったよな」


「言うなよ」


「こっちの独房にも、捕まった元プロ野球選手や

 オリンピック候補がいたから試合は盛り上がったし点数も取り合った」


「……でも、今じゃ残ったのはずぶの素人集団だもんな」


以前は優れた身体能力の囚人が野球でガンガン刑期を短くして、

さっさと出所してしまい、もう残ったのは能力のない囚人ばかり。


それは相手も同じで、残りもの同士で終わりのない戦いを続けている。


そして今日。新たな囚人が入って来た。


「お前ら! それでも囚人か! 自由が欲しくないのか!?」


「「「 な、なんだこいつ…… 」」」


「俺は元々高校で部活の指導をやっていた教師だ!!

 お前らのようなどうしようもない人間を何人も見て来た! だから言える!

 お前ら、ここで諦めるのか!!」


教師囚人は同じ独房のやつらを順番にひっぱたいた。


「いつから悔しいと思わなくなった!? これでいいと思うようになった!?

 お前らはもともと自由だったんだ! こんな檻の中にいていい人間じゃない!」


「せ、先生……!」


「教師として生徒に暴行してしまって収容されたが、心までは腐っていない!!」


ぽっと出の囚人だったが、涙で語るその熱い言葉には力があった。

死んだ魚のような目立った囚人たちの瞳に火がついた。


「俺……本気で野球やってみる! みんなそうだろ!?」


「「「 おお!! 絶対に自由を取り戻してみせる! 」」」


囚人たちの熱い気持ちはやがて看守の心をも動かして、

囚人たちは自由時間だけでなく寝る間も惜しんで野球を練習した。



「もっとだ! もっと速く投げるんだ!!」

「はい!!」


「あの夕日に向かってダッシュだ!!」

「はい!!」


「ようし! これから1000本ノックだ!!」

「はい!!」


こちらの独房チームの練習量は相手の比ではなかった。

血と汗を流しながら毎日欠かさず練習をした。



数週間後、待ちに待った囚人野球大会。


厳しいトレーニングをくぐり抜けた囚人たちの体は出来上がっていた。

全員が一流のアスリートのような体つきになっている。



「プレイボーール!!」






そして、囚人たちは100点差をつけられて負けた。

相手チームが審判を買収したことに気づいたのは試合が終わってからだった。



「ボール! フォアボール!!」

「ボール! フォアボール!!」

「ボール! フォアボール!!」

「ボール! フォアボール!!」……

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