◆A◆?◆?◆
その姿を見送ると、
「ほんと嘘、つけないんだなあ……
ボソッ、と自身にしか聞こえぬ声で呟き、
先程、仁子と遭遇した場所に辿り着いたその刹那、輝紀は身体を強張らせ、背後を振り返った。
嫌なオーラ、それは日中に誠也と過ごしたカフェで感じたあの殺気とそっくりだったのだ。
「うっ!」
油断していた。前方から肩を掴まれた輝紀は腹から殴られた。
アスファルトの上に転がり咽返っていると、覆いかぶさってきたのは漆黒の影。
「なっ……!」
いつもと違い、周囲は瞬く間に全て灰色と化した。
輝紀は
「何するんだ! やめろ……!」
漆黒が懐から取り出したのは怪しい小瓶。その中をさらさらと動き回っているのは
輝紀は抵抗するが、黒装束に馬乗りになられ、身動きを封じられてしまった。
「嫌だ! やめてくれ! うっ……うああああああああああああああああああ!」
絶叫。
しかし、誰にも届かない。
黒い指に口をこじ開けられ、流し込まれてしまったその砂――それは全身の血管の中を生きものであるかのように這い回る。
ピクピクと身体を痙攣させる輝紀を見下しながら、黒装束は高らかに笑ってみせた。
《きもちいいだろう……? テルキくん》
ぼんやりとしていた輝紀の意識は次第にはっきりとし始めた。何事もなかったように身体を起こし、黒装束の元へと跪く。
一礼して顔を上げた輝紀の両目、光を放つ左手首、そして刻印を宿した左足は――。
「はい。デッド様……」
漆黒に呪われ、染め上げられていた。
◆Next Start◆五章:漆黒ノ手
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