ハッシュポテト派です。

八田亜利沙

前日譚

八田ありさは塾講師をやめた。


別に不満があったとかではない。

受付のつもりで応募したのに講師職で採用されて、文系なのに理系で登録され、コマ給のせいでコマ外労働含めたら給料が微妙なのとか、初年度なのに受験生3人も持たされてコンチクショウって思ったとかじゃないよ、ほんとほんと。


そんなわけでやめた。


制服のかわいいアルバイトがしたかったのも事実だ。

顔に似合わなくてもあの青くて乳袋のあるふりふりエプロンが着たかったとか、馬車道のお着物が着たかったとか、給料の高くてちやほやされるアルバイトがしたかったとか、そういうつもりもあった。

「制服 かわいい」で検索かけていろんなアルバイトも探したし、声優を目指していたこともあってそういうバイトも探した。

ただそういうところは軒並み大学や家から遠く、まじめな学生たる筆者的には行き来の時間を勉強に費やしたかったのもあって諦めてしまった。1年次週20コマである。さすがにバイトに行くのに片道1時間使っていたら、勉強がおろそかになる。教職もとっていたし、親にも遠いところは苦い顔をされた。


で、どうしよう。無収入もつらい。

そんな時にふと目に入ったのがマクドナルドだった。

給料は激安、別に制服がかわいいとかじゃない。ただ、なじみがあって、駅前にあって、うん、まあいいか…?

軽い気持ちでエントリーして、軽い気持ちで履歴書を書いて、軽い気持ちで面接に行った。


コーラくれた。

え、面接行ったらコーラくれた…タダで…。

そのコーラをずりずりすすりながら、責任者を待つこと数分、始まったのは「テスト」。

いわゆる適正テストというか、「こんな場面の時どうする?」みたいな、接客場面にありがちなパターンを質問される。よく覚えていないし覚えていても詳しく描くと怒られそうなので割愛させてほしい。

とにかくいろいろ考えて、私なりにこたえて、人に自分の考えを見られる恥ずかしさで死にそうになりながら提出して、軽い口頭試問のようなものがあって。


「それじゃあ、八田さんと一緒に働いていきたいなと思います。」


3年弱のマクドナルド人生がここから始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハッシュポテト派です。 八田亜利沙 @lostmysnow

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ