第15話 愛しい君へ

ワンピースを身にまとった六花は街を一望できる丘の上にきていた。


そこには、祥が眠っている。


そっと、シロツメクサの花冠をそなえる。


墓石には祥の名が刻まれている。


「全て終わったよ」


祥が死んで一年が経とうとしていた。


祥は死の間際まで全ての知恵を絞り、世界中の組織を壊滅させる手段を考えていた。


組織に捕らわれた六花を解放するため、これから幸せに暮らすための祥なりのやり方だった。


警察や六花のように組織を抜けたがっていた人々の協力もあり、目に見えて治安は良くなっていった。


六花は今でもあの屋敷で暮らしている。


組織の壊滅により、行き場を失った子供たちを引き取り屋敷で暮らしている。


祥の遺言でたくさんの施設を作った。


毎日が慌ただしく、目の回るような忙しさだが、幸せだと感じる。


忘れていた感情も少しずつ戻りつつある。


髪も少しずつだが、色を取り戻していた。


全てに絶望し、闇に生きていた少女はもういない。


「また来るね」


帰ろうとする六花をやさしい風が吹き抜ける。


祥との約束が果たされるのはもう少し未来さきのこと。




終わり。


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愛殺(仮) 雪野目 晴 @yukinomeharu

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