第14話 そして・・・
ふと、冷たいという感覚と共に目が覚めた。
そこには見慣れた天井。
体が鉛のように重く、動かすと激痛が走る。
人の気配に首を巡らせると、筒井が背を向けて手を動かしていた。
視線に気づいた筒井が目を覚ました六花と目が合うと、泣きそうな表情になり、動けない六花の頬を両手で挟んだ。
力が入りタコのようになるが、嫌な気はしなかった。
「心配したんだからね」
「・・・ごめんなさい」
あのあと、どうなったのかは分からないが、自分はまだ生きている。
手のぬくもりを感じることができる。
食事後、彼に会いに行こうと促された。
自力では歩けないので、車いすを押してもらった。
六花が屋敷を出て行って、目が覚めるまで一か月が経っていた。
祥の命の期限はとうに過ぎていた。
しかし、奇跡のように一時的に体力を回復し、六花を無事助け出すことができたという。
それは、本当に一時的なことで。
部屋のベットで祥は横たわっていた。
他の面々もベットを囲んでいる。
六花が近づいても祥の眼は閉ざされている。
しかし、かろうじて上下する胸が呼吸していることを知らせてくれる。
「祥」
声をかけると祥はゆっくりと目を開け、六花をとらえた。
気をきかせて、皆部屋を出て行った。
祥は真っ直ぐに六花だけをとらえ、嬉しそうに笑った。
もう会えないと思っていた。
だいぶやつれ、顔色は悪いが笑顔はかわらない。
ゆっくりと体を起こす。
辛いらしく、ベットにもたれかかっても息が荒い。
涙があふれる、もう別れなのだと。
「六花、輪廻転生って知ってる?俺たちの国の考えなんだ」
祥が手を差し出したので、両手で包むように握った。
「一度死んで、再び生まれ変わることだよ。俺はもう一度生まれ変わって会いに行くから、待っててくれるか?」
まるでおとぎ話のような約束だが、六花にはそれで充分だった。
のどがつまり、声がでない。
返事のかわりにうなずくと、さらに涙が流れる。
「約束だ」
自然と二人は顔を近づけ、触れるかどうかのキスを交わした。
最初で最後のキスだった。
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