第13話 組織

「やっぱり、敵うわけないか」


天を仰ぎ、六花は呟く。


体を起こそうとすると、激痛が全身を貫く。


特に左肩は肉をえぐられ、血が流れ続けている。


あばらも折れたのか、息をするだけで痛い。


口の中に血の味が広がり、つばとともに吐き捨てる。


「今一度チャンスをやる」


満身創痍の六花を見下しながら、黒スーツの男は無感情に声をかける。


屋敷を出て向かったのは、組織の本部。


敵わないのは知っていた、だから死を覚悟して来た。


祥を殺すことはできない。


このままでは裏切り者として始末され、新たな殺し屋が送り込まれるだけだ。


せめて何か一つでも抵抗したかった。


人生を狂わされた、憎き組織。


目の前の黒スーツの男は、組織のトップであり、六花に人殺しの技を叩き込んだ本人だ。


「・・・っ、私はもう誰も、殺さない」


「そうか、お前ほどの腕を失うのは惜しいが」


その目には何の感情もない。


六花ですらゾっとするほどのまなざし。


死を覚悟して、下を向く。


全てをあきらめ、目を閉じ痛みから六花は意識を手放すことにした。


最後の瞬間には愛おしい人の顔を思い出しながら。


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