第9話 久々
その日は久しぶりに暗殺のために夜の闇の中にいた。
匂いで気づかれないよう、ハンドクリームはつけていない。
代わりにその手にはどす黒い血がこびりついていた。
久しぶりで手元が狂い、思いっきり血を浴びてしまった。
白い髪や頬にも血がこびりつき、ムッとするような匂いが鼻を刺激する。
「 … っ」
少し離れた所で、耐えきれず吐いてしまった。
元々血が苦手で、なるべく血が出ないように一思いに殺していた。
後始末を組織に任せ、その場を後にする。
屋敷近くの公園である程度血を洗う。
そのまま戻っても大丈夫とは思ったが、何故かこの姿を見られたくなかった。
血は消えても、匂いは消えない。
必要以上に擦っていた。
どれ程洗っても絶対に消せないのだと思い出す。
そう思った瞬間、頬を熱いものが伝うのを感じた。
自分が泣いていることに気づく。
静かに涙が溢れ、脳裏に祥の顔が浮かぶ。
「 … 殺したくない、なんて」
もう忘れてしまったと、思っていた。
まだ人間らしい感情が残っていたのだと、ホッとする自分がいた。
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