第3話 もてなし

深夜の屋敷の一室で、少女はもてなされていた。


小さな丸テーブルの上には白いティーポットに、カップが2組。


見たことのない鮮やかな菓子がバスケットに入っている。


大人しく座っている少女の目の前で、慣れた手つきで青年がお茶をいれる。


ふわりとたちのぼる香りは青臭く、緑色をしていた。


「小さな島国のお茶だよ。毒なんか入っていないから安心して」


先ほど笑顔で喉元にナイフを突きつけていた人物が言う台詞かと思ったが、少女は無を通す。


少女の向かいに座った青年は、自らの入れたお茶を飲み、少女に菓子をすすめた。


反応のない少女に構わず、青年はしゃべりだした。


「君、プロの殺し屋なんだろう?」


「名前は?」


「出身は?もしかして、小さな島国?その目の色と、服装は特有だもんな」


矢継ぎ早に繰り出される質問。


まるで友を相手にしゃべっているかのよう。


良くしゃべるなぁ、と思った。


自分を殺そうとしている相手を目の前に、どんな神経かと疑いたくなる。




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