第2話 再び

翌日、正しくは夜。


暗殺失敗に終わった少女は再び屋敷に忍び込んでいた。


今度こそターゲットを殺すために。


細心の注意を払い、気配を探りながら部屋へと入る。


昨日の今日なので、警戒されたと思ったが、何一つ変わっていない。


逃げるときに破損した窓だけが新調されている。


壁際の闇の中で身を潜め、全神経を研ぎ澄ませ、相手の気配をさぐる。


「そんなに警戒しなくても、ここにいるよ」


のんびりとした青年の声がし、一瞬死にも似た感情が沸き上がる。


しかしそこはプロだ。


動揺をすぐに消し声の方へと目を凝らす。


黒い服で闇に紛れた青年の姿があった。


「今日も来てくれたね」


両手を広げ、歓迎するような仕草をする。


その瞬間だった。


部屋の隅より数本のロープが伸び、少女をみの虫のように巻き上げた。


文字通り手も足もでない。


それでも少女の表情は全く動かないし、声も発しない。


「やぁ、ご機嫌いかがかな?可愛い殺し屋さん」


緊張の欠片もない、青年は嬉しそうに笑顔で近づく。


人の良さそうな笑みで、少女の喉元へナイフを突きつけた。


「手荒なマネはしたくないんだ。逃げないと約束してくれるなら、全て解除するよ」


「…わかった」


初めて発せられた少女の声は、凛としていて抑揚がなかった。

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