最終話 凍宇宙ワゴン

「ハル~、この荷物も載せてくれ」

「まったく、どんだけ持っていくのさ。スペースワゴンが飛ばなかったらどうするの」

「大丈夫大丈夫!」

 今日、この星を出発する。アタムがどんどん荷物を持ってくるのがかわいい。

 おばさんには、教会が企画するこの星一週の旅がプレゼントされた。ナダヨミ領とイズミ領双方のリゾート地をめぐり、文化や絶景、グルメを楽しめる最強のプログラムとなっているらしい。司祭は「胃袋をつかめば勝ちです」と言っていた。


「ふー、やっと積めた……行くぞ、ハル」

 アタムが運転席に座り、エンジンをかけた。少しずつ車体が浮いていく。


「まずはどこに行くの、アタム」

「そうだな……月が本当にピンクかどうか、確かめてみようぜ」

「良いね、面白そう」

 街が、教会が、小さくなっていき、空が白から紺色へと変化していく。

 やがて前方に現れたピンク色の月を目指しながら、アタムと一緒ならどこへでもいける気がした。

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【短編】ハルとアタム 鍋野ぽとふ @potaufeu_chan

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