第2話 旅に出ようと思うんだ

「あーーーー、疲れたぁ」

 アタムがベッドに倒れ込む。ベットは燃え上がるようなオレンジ色だ。机の上にはホログラム天球儀がある。

「ところでアタム、話って……?」

「おー、……俺とハルってさァ、仕事仲間じゃん?」

 アタムが仰向けに寝返る。

「うん」

「しかもさー、お互いに替えが効かない感じじゃん?」

「まあそうだね」

「お互いがお互いを必要としている、つまり愛し合ってるわけだ」

「えっそれは……そうかもしれないけどさ、」

 なにを言っているんだ、この男は。

「ハハッ、赤くなった」

「ふざけてないでさ、本題を言いなよ」

「ごめんごめん。……俺さ、旅に出ようと思うんだ」

「えっ」

 ホログラム天球儀が光る。アタムが暗幕を閉める。と、コーロ星を中心としたプラネタリウムがアタムの部屋に広がった。

「ずっと夢だったんだ。宇宙を旅するの。それでこの前、ついにスペースワゴンを買った。ハルと稼いだお金でさ」

「そ……っか……うん、楽しんできて」

「は? お前話聞いてた?」

 アタムが上半身を起こす。

「俺たちはお互いがお互いを必要としている。な、一緒に行こうぜ」

「ああ……気持ちは嬉しいよ、アタム。でも、他に誰かいるんじゃないの? 恋人とか……」

「ハーーー……」

「うわっ」

 アタムは呆れたようにため息をつくと、右腕でぐいと僕の顔を引き寄せた。

「前の子とは別れたんだ。それに、」

 アタムの目に映り込んだプラネタリウムの星々がゆらゆらと輝く。

「ハルは、俺を刺すときに、一緒に泣いてくれる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る