1-3

  ◆


「げほっ!」

 舞った土煙を払いのけるように何度も手を振ってみせてからリンダラッドは眼をそっと開く。

「どうだ!」

 晴れていく土煙の向こうから胸を張るかのように鼻を高くしたヒュウが現れる。その奥では岩壁が派手に崩れ、人一人がゆうに通れるほどの穴が開いている。

 穿った穴はレイ式銃の威力を雄弁と物語っている。

 弾の装填や射出条件などが科学一辺倒の最新式の銃とは比べ物にならないほど不便だが、その威力は兵器として間違いなく一級品だ。

「威力が大きかったみたいだけどまあ通れるし、これで結果オーライだ」

「君は馬鹿なのか?」

 歳不相応の落ち着きを持ったリンダラッドは眉間に皺を寄せヒュウを睨み付ける。

「一歩間違えればそれこそ二人で生き埋めになるようなところであんな威力の銃を撃つなんて。

 命知らずのヒュウ・ロイマン。君はただの命知らずじゃなくて馬鹿な命知らずだったわけだ」

 いくら文句を吐き出そうとリンダラッドの不機嫌はまるでおさまらない。

「まあまあ。先んずれば即ち人を制し、後るれば則ちなんとやらってところだ。

 おかげで面倒で難解な壁もご覧の通り。

 通気性が高くかつ、出入りにも便利になったわけだし」

 もはや壁でもなければ扉でもない。

 かつて二人の前に立ち塞がっていた巨大な壁には見事な穴が穿っている。

「むぅ……」

 ヒュウの言葉と目の前の穴を見ると騒がしかったリンダラッドも閉口するしかなかった。

「そんじゃお宝と面会と行きますか」

 ヒュウは銃を腰に戻すと岩壁の破片を蹴とばしながら中へと入る。

 いやらしく手を揉みながら抑えきれない笑顔を隠そうともせず早足で穴を潜る。


「こりゃあまたずいぶんと……」

「こ、これって……」

 二人は思わず言葉を失った。

 これまで二人が歩いてきた手狭な通路から一変し、あまりに広大な空間が二人を迎える。

 半球状の空間はまるで闘技場のように周囲をぐるりと囲むように椅子が用意され、床には微細な文字がびっしりと描かれている。

「おっ!」

 天井からすっと視線を降ろした先に見えたものに条件反射するかのようにヒュウは思わず声をこぼした。

 暗く、輝きのない空間に静かに佇んでいるそのレイ・ドールには幾重にも蔦が絡みついている。

 禍々しいほど巨大な口を持ったレイ・ドールは操縦席を晒しながら沈黙している。

「あ……あった!!」

 リンダラッドが嬉々とした声をこぼし跳ねる。さっきまでの落ち着いた表情が満面の笑みになる。

「ああ。あったな。さてと……悪いけど喜ぶのはそこまでだ。ストップだ」

 腰に携えた銃をヒュウは再び手に取り構える。駆け出そうとしたリンダラッドに銃口は向けられた。

「なんの真似」

 怯えるでもなく落ち着いた目でヒュウ、そして自らに向けられた銃口をリンダラッドは見据えた。

「別に。単純な話しよ。あのドールは俺が貰う。そんだけだ」

「僕を殺すの?」

「大人しくしてりゃ撃ちゃしねえから安心しな。依頼はお前を送るまでが仕事だ。どうせならその報酬も欲しいからな」

 静まり帰る空間にコッ、コッとヒュウの足音が響き渡る。

「君にアレが、オリジンが操縦できるの?」

「レイ・ドールってのはライダーの魂に合わせてスゲエ力を発揮するんだろ。それならレイ式銃も使える俺にも操れるだろ」

 そう声を響かすとヒュウは持っていた銃を見せつけるように先端を揺らしてみせた。

 レイ・ドールは魂あるものならば操れる。そしてその魂に応じて様々な力を発揮する。

「残念だけど、オリジンは量産のレイ・ドールとは違いライダーのレイを選ぶよ。

 つまり君がオリジンのライダーに相応しいレイを持っていなければ操ることはできないよ」

「まあ仮に操縦出来ないとしても売れば十分な金が入るだろ。それで、新しいレイ・ドールを買えば良いだけの話しよ」

 ヒュウは舌なめずりするように笑い、蔦が這い、沈黙を続けたままのレイ・ドールを見た。

 オリジンともなれば一体どれだけの価格で売る事ができるか。想像しただけ笑いが止まらない。

「さて、それじゃあお宝に早速乗り込ませてもらうとしますか。お前はそこで大人しくしてろ。俺だってガキを撃つ趣味はねえし、何より弾がもったいねえ」

「はいはい」

「えらく物分かりが良いな」

「僕としてはオリジンの有無が確認したかっただけだからね。無事に送り返してくれるなら止める気なんてないよ」

 諦観めいた力のない声でリンダラッドは小さく頷く。それは呆れともとれるが、ヒュウにとってそんなことはどうでもよかった。

 ──待たれい!

 その声は、突如、この広い空間の中に響き渡る。

「うぉっ!! だ、誰だ!」

 ヒュウの道を塞ぐかのように短刀がどこからともなく飛来し床へと突き刺さる。

 地面へと突き刺さった短刀は、柄が極端に細く、刃は菱形からなっている。

「拙者の苦無をかわすとはなかなか出来るな。

 そのレイ・ドール、拙者、この菊虎(じゅうかい)輪蔵がいただくでござるよ!」

 暗闇のなかに忽然と姿を表したのは、その口元を紺色の布巾で覆い素顔を隠した青年だ。

 黒髪と黒い眼。この辺では珍しい色合いだ。

「どこのどちらだか知らねえけど、そいつは俺のもんだ。勝手に手を出すんなら、殺すぞ」

 突然の乱入者など今のヒュウには邪魔者以外他ならない。何の躊躇いもなく銃口を突きつけ引き金に手をかける。

「ならばやってみるが良い!」

 突きつけられた銃口を前に輪蔵は布巾の下で口元が笑う。その手に握った札を一枚掲げる。

「レイ・カード!?」

「貴様のような下賤な輩に拙者が倒せるでござるか? 示然丸ぅ!」

 輪蔵の声に呼応するかのように札が輝くと同時に姿を現したのは、背中に刀を背負い輪蔵と同じように素顔を布巾で隠したレイ・ドールだ。

「ど、ドール!? ってことはライダーか!」

「左様!

 示然丸こそ拙者の相棒にして愛機でござる。レイ・ドールを前にしたお主など路傍の石同然でござる」

「オリジン諦めた方が良いんじゃないの?」

 非戦闘員であるリンダラッドは危険なこの場から外れるように隅っこで白旗をあげるように座り込んでいる。

「勝手なこと言うな。あれは俺のもんだ。誰にも奪わせねえからな。

 こちとら今まで幾多もの死線を潜り抜けて依頼をこなしてきたんだ。レイ・ドールの一騎や二騎がなんだってんだ!」

 時に非合法の仕事を請負ってきたヒュウの前には様々なライダー達が己のレイ・ドールを持って立ち塞がってきた。そしてヒュウは依頼達成のためならばそれらを破壊してきた。

 目の前にいるのはたった一騎のレイ・ドールだ。ただそれだけだ。

 ──邪魔をするなら破壊するまでよ!

「二号呪弾ッ!」

 壁を破壊したときに用いた弾とは色違いの弾をリボルバーに詰める。握った銃のリボルバーが激しい輝きを放ち、ヒュウの体からレイを吸い上げる。

「おっと! その銃の威力は先刻承知! まともに受ければ拙者の示然丸と言えどただではすまん。しかし、それも当たらなければ無用の長物でござる。

 示然丸! とうっ!」

 輪蔵は派手に飛び上がり示然丸の胸元にある操縦席へと乗り込む。

 ライダーを受け入れたレイ・ドールはそのレイを全身に漲らせ薄い光を放つ。

「見るが良い。拙者のレイが持つ力を!」

「うるせえ!! 吹き飛びやがれ!」

 肥大化した光を銃口の一点へと収縮させヒュウは引き金を思いっきり引く。

 射出された光弾は轟音をたて遺跡の壁を破壊する。その射線上にいた示然丸を確かに撃ち抜いたはずだが、姿形が微塵もない。

「どこ行きやがった!?」

 砕けた破片すら見当たらない。

「無駄なことでござる!」

「ど、どこだ!? 出てきやがれ!」

 声はするが示然丸の姿は影も形もない。

「拙者のレイは『隠』。すなわち己の気配。そして姿すらも消す事が出来るのでござる。

 足音すら消すこの力の前ではお主のその銃も役立たずでござるよ」

 空間に輪蔵の勝ち誇った声が反響する。

 幾ら目をこらしたところでまるで見えない。

「どこを見ているでござるか? 拙者はこっちでござるよ」

 敵が見えず捉えることのできないヒュウは迂闊に動けない。

「ぐっ!」

 真横を何かが掠めるように過ぎ、床を激しく切り付ける衝撃と破片がヒュウを襲う。

 転がるヒュウの傍を二度、三度と床が切り付けられる。

「諦めるでござるよ。

 お主に勝ち目はない!」

 そう言い切ると同時にヒュウの目の前に刀を振り上げた示然丸の姿が突如として現れる。

 咄嗟に横に飛びのいたが振り下ろされた刀の衝撃がヒュウを壁際まで吹き飛ばす。


「宝諦めて逃げる?」

「い、いや……まだだ!」

 傍観者のようにまるで危機感のないリンダラッドの声にヒュウは青色吐息で起き上がるとポケットから玉を一つ取り出す。

「強がりはやめた方が良いよ。少なくとも君の銃はあのレイ・ドールに当てられないわけだし、こっちは八方塞がりだよ」

「諦めたらあの宝ものが奪われちまうだろ。死んだって渡すことはできねえんだよ!」

 強がってみたところで勝つ術がまるで見当たらない。

 レイ・ドール相手に生身で真正面から立ち向かうなどヒュウでも無謀だとわかる。それでも向かってくる示然丸の後ろに佇むレイ・ドールを何としても手に入れたかった。

「ったく、ここに来てこんな奴が出てくるなんてな。悪いけど、お前を無事に送り届けるのは無理かもな」

「それは困るよ。せめて僕だけでも逃がしてくれないと」

「じゃああいつをどうにかする手でも考えやがれ!」

「レイ・ドールに抵抗するならレイ・ドールしかないよ」

「んなこと知ってるよ! そんなレイ・ドールがあるなら……」

「あるじゃん」

 ヒュウは思わず顔を上げた。

 向かってくる示然丸。それに立ち向かうためのレイ・ドールがさらにその奥で沈黙を守っている。

「わっ!!」

 ヒュウは土塗れの汚れた顔で笑ってみせるとリンダラッドの手を掴み引き寄せる。

「そんな人質など拙者には無意味でござる!」

 示然丸がゆっくりと近づいてくる。手には人を殺すには十分すぎるほど巨大な刀。殺意を宿すかのように鈍色に輝く。

「良いか。今から五秒数えるから目を潰れ」

「……頼むから僕を殺さないでよ」

「任せろって」

 歯を見せて笑ったヒュウはたった一言『五』と呟く。それが始まりを告げた。

「拙者と示然丸。そしてこの愛刀満月の前では何人たりとも敵はなしでござる!」

 ──四……三……。

 ヒュウはそっと掌サイズの玉を握り込み迫りくる示然丸を睨む。

 ──二……一……。

「愛刀の錆となるでござる!」

 刀を振り上げ迫りくる示然丸を前にヒュウは『ゼロ!』と叫ぶ。

 握っていた玉を力の限り床へと叩きつける。

 ──閃光。

 この半球状の空間全てから影を奪い白に包むほどの光量。瞼を閉じてもその上から視界を焼き切らんばかりの威力の輝きが二人と示然丸を包む。

「この光はな、なんでござるか!?」

 輪蔵は眼を抑える。

 あまりに暴力的な光が空間を支配する。


 目を覆ってもなお痛いほどの光が襲ってきた。リンダラッドが目を開けたときはその小さな体をヒュウは抱えながら走っていた。

「眼、大丈夫?」

「この程度、どうってことねえ!」

 ヒュウは眼を真っ赤にしながらも迷うことなくオリジンであるレイ・ドールに向かって走る。

「こんなこと言うのもどうかと思うけど、機に逃げないの?」

「冗談じゃねえ! ここまで来て宝をみすみす誰かに渡すくらいなら死んだって俺が奪ってやる。んで、どうやったらレイ・ドールには乗れるんだ?」

「普通のレイ・ドールだったら胸に乗り込める操縦席があるはずだけど」

「よし!!」

 大きく頷いてみせたヒュウはそのまま身軽にオリジンの脚部を伝い一気に胸まで駆け上がる。

「ここか」

 半分開かない目で見つけた操縦席に躊躇いもなく乗り込んだヒュウは、リンダラッドを抱えたまま埃塗れの椅子に座る。

「こいつで操作するのか?」

 両手を水晶の上に置く。

「んで、こいつを起動させるには!?」

「そこまでは僕も知らないよ。だいたいレイ・ドールなんかに乗ったことないんだから」

「どっかに電源でもあるのかよ。動けって!」

 ヒュウは思いっきり蹴飛ばしてみるがレイ・ドールは微動だにしないまま沈黙を守っている。

 ヒュウとリンダラッド。どちらもレイ・ドールの操縦席など拝んだことはない。ましてや操ったことすらない。

 そんな二人が出来ること言えば文句を吐き出すか蹴飛ばすか神頼みかくらいだ。


「くっ! 奴はどこでござるか!?」

 次第に目が開きつつある輪蔵は涙の滲む視界であの男を探した。

 栗の色の髪をし、救えぬほどに強欲なヒュウの姿を。

「動けって! このポンコツレイ・ドール!」

 声が聞こえた。

 示然丸がその声を聞き取るかのように振り向くと奴がいた。

 オリジンに乗り込み喚きたてるその姿は紛うことなくあの男だ。

「見つけたでござる!」

「やべえ! 動けよ!」

 走り出した示然丸の存在に気が付いたヒュウは蹴飛ばすなり水晶を思いっきり握りしめるなり試しては見るがオリジンであるレイ・ドールはピクリとも動こうとはしない。

「残念でござったな。お主はライダーとしての資格がなかったようでござる。拙者の怒りで、お主をそのレイ・ドールごと二つに裂いてくれるござる!」

 怒りが顔全面に出ている輪蔵の声は殺意に満ちたものだ。

 ヒュウが乗り込んでいるオリジンと呼ばれる特殊なレイ・ドールであることすら、怒りに身を任せた輪蔵の目には映らない。

 愛刀であり振り上げられた満月が不気味に光る。

「こんなところで諦められるかよ!」

 巨大な報酬だけでなく特殊なレイ・ドールまで手に入れる機会だ。それをこんな形で諦めたら死んでも死にきれない。

「宝は全部俺のモンだ!」


 ──ヴォン……


「へっ?」

「むっ!」

 小さな駆動音。それが全ての始まりだった。

 示然丸同様にレイを流され全身が薄く発光したレイ・ドールはゆっくりと体に張った蔦を引き千切るように前へ出る。

「動いた! よし! あとはあいつを叩き潰すだけだ!」

「叩き潰すってどうやってだい? このレイ・ドール見たところ武器の一つもない様子だけど」

「……」

 レイ・ドール用の武器など当然持ってるはずもない。少なくともヒース国では武器を与えられるのは領地外への遠征が認められた一部のライダーのみだ。

 刀を振り上げ向かってくる示然丸を撃退する術などあるはずもなかった。

「こうなりゃ体当たりで、このレイ・ドールごと奪って逃げる! 動けばこっちのもんだ!」

 水晶を通すことでヒュウのレイがオリジンへと流れ込んでいく。

 徐々に動きが滑らかになっていき、オリジンは次第に軽やかに走り出す。

「馬鹿め。真正面から来るならば二つに叩き切るまでのことでござるよ。

 そこが貴様の棺桶でござる!」

「ま、待て! 曲がれ! いや、と、止ま──っ!」

 咄嗟に止まる事の出来ないオリジンを前に示然丸はその振り上げた刀を思いっきり振り下ろす。

「切り捨て御免!」

 全てを断ち斬る示然丸の愛刀満月。その刃から繰り出される斬撃がオリジンを二つに分けるはずだった。

 ──ガキッ!

 聞こえてきたのは乾いた音だ。

「拙者の満月が!?」

 オリジンであるレイ・ドールはその巨大な口を大きく開き鋭い牙で示然丸の刀を噛み砕く。牙を生やしたオリジンはそのまま満月を噛み砕くと呑み込んでしまう。

「……食った」

「食べちゃった」

 操縦席にいた二人もこの事態を端的に言葉にすることしかできない。

 あまりの異常事態にどう反応していいのかまるでわからない。

 ──全てを奪え!

 そんな二人を置いていくかのようにレイ・ドールが激しく輝きだす。金と赤の入り混じる光。

「赫金のドール……」

「なんでござるか!?」

 オリジンを包み込む金色の光。

──WOOOOOO!!!!

「ぐあああぁぁぁあ─────ッッッッ!!!」

 巨大な牙を見せつけるように口を開き咆哮をあげたオリジンは、ヒュウの体から莫大なレイが吸い出す。それらは全て、金色の輝きと化しオリジンの手へと集中する。

 レイを吸い尽されるかのようにヒュウの体から輝きはなくなり意識を奪われる。

「だ、大丈夫!?」

 膝にちょこんと乗ったリンダラッドは、気を失いもたれかかってくるヒュウの体を必死に抑える。

 息こそしているが返事は一切ない。

 ヒュウが放出した金色の光は収縮し刀へと形を変える。その反り返った刀身のシルエットは見紛うことなく示然丸の愛刀満月のものだ。

「拙者の満月を奪ったでござるか!?」

 目の前で起きていることを逐一記憶するためにリンダラッドはその碧眼の瞳を見開いて目の前の光景を凝視する。

 瞬きする時間すらも惜しい。

 金色に輝く刀をおもむろにオリジンは振り上げる。

「ヤバイでござる! 示然丸ッ!! 退ッ!」

 金色の光を放つ刀を前に輪蔵が叫ぶと示然丸の姿が消える。

 標的の姿が消えたにも拘わらずオリジンは振り上げた刀をそのまま振り下ろす。

 溢れ出る金色の光は閃光となって全て切り伏せ、薙ぎ倒し、更には天井を貫く。

「うわっ!? ちょ、ちょっと!」

 金色の柱が天井を貫き、大地を切り裂き明け方の空へとその輝きを伸ばす。

 天を貫く黄金の柱。

 遺跡を破壊し大地から噴き出したその柱は虫も眠る時間に静かに空へと溶けるかのように消えていく。

「お、起きろ!!」

 派手に天井を壊した遺跡は巨大な揺れと共に倒壊を始めるが、問題はライダーであるヒュウはいまだ意識を失ったままだ。

 幾ら揺さぶったところで反応が返ってくるべくもなかった。

「このままじゃ僕たち生き埋めだよ!!」

 ──ズゴッ!

 轟音とともに遺跡の天井そのものが抜けるように巨大な塊が落ちてくる。それはオリジンであるレイ・ドールを押し潰すに十分な大きさだ。思わずリンダラッドは声が出てしまう。

 ──ガリエン!

 崩壊する遺跡のなかに鋭く凛とした声と共に蒼白の光弾は駆け抜け、オリジンに向けて降り注ぐ岩々、そして巨大な天井を、一つとして残さず破壊する。

 全てを破壊し終える蒼白の光弾はゆっくりと、ヒュウが操ったオリジンの前に降り立つ。

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