13話

 村に噂が広がった。

 騎士の姿をした数多くの幽霊が、ザザの家に向かって行ったという物だ。

 窓の外を多くの兵士が行軍して行く足音が聞こえたというものもあった。


 そしてザザ家の隣人は、窓辺に映る、何度も何度も剣で貫かれるザザの両親の姿を見た。


 次の朝、発狂したザザの両親がへらへらと狂った笑みを浮かべながら彷徨うように村から出て行った。

 彼らは翌日、嘆きの湖に浮かんでいた。


 そして、彼等の主人の家でも異変が起きる。

 使用人が次々と事故に合うのだ。

 ザザが死んだ日、庭師の意地悪爺さんが庭木から落ちて大怪我をしたの手始めに、厨房で竈かまどが割れ賄いの女中が大火傷を負う。

 セルジオに絡んだ家に唯一残った跡取りが兄と同じように姿を消した。


 不幸は重なる、失踪の噂が広まる同時期に金貸しの両親が都の株に失敗し莫大な借金を作った。

 数日で二つの家が途絶えた。


 村では墓を荒らした馬鹿者が死霊に祟られたと噂になり、夜出歩く者が居なくなった。


 ・・・・


 「やっぱり呪いかしら?」

 最近、セルジオの家にお泊りばかりしているニーニャが話しかけてくる。


 「あのぉ、ニーニャさん? 独身の男に家に入り浸るのってまずいんじゃない?」

 「え? あ・・・でも、怖いし・・・・」


 最近少しふっくらしてきたインプが藁敷のベットの下の箱からひょっこり顔をだし、『ピギィ』と意味の分からない返事をしまた篭る。


 「家大きくしないと、俺ずーっと床で寝ないと行けなくなるんだけど・・・・」


 「そう!そうよね! 家建て増ししましょ!!

 私、セルジオの隣の部屋でいいからね? 足りなかったら私も出すからそうしましょ!」


 なんかもう、あなたは嫁ですか?的な発言をかますニーニャに頭を掻きながら、苦笑いするセルジオ。


 セルジオのベットは既にファンシーなアイテムが所狭しと持ち込まれ、台所の土間のような場所の端っこにセルジオが寝ているのだが、すでに誰がこの家の主人か解らなくなっている。


 「・・・・俺も疲れが取れないから、近いうちにジードにお願いするよ」


 そして、今日も深夜に兵士の霊がお礼に訪れ、机の上に財宝が置かれていく。


 そんな異常な日々が、セルジオの日常だった。


・・・・


 ある日、朝早く村長がやってきた。


 「セルジオおるか?」

 「はい!」

 「ふぁ~ぁ・・・村長さんおはようございます」

 セルジオは既に家畜小屋を掃除して畑を見回った後だが、ニーニャがファンシーな寝巻き姿で起きてくる。


 「・・・・セルジオや爛ただれた生活は行かんぞ?!」

 「はぁ・・・・台所の土間で寝起きする生活が、爛れているのでしたらそうです」


 「・・・・そうか、少し不憫じゃの。いや、安心した」

 「で、ニーニャはセルジオの家に入り浸びたっておるのか?!」

 彼女の?ベットの様子をみて嘆息する。


 「ニーニャ、わしの家に来んか?」

 「えぇ? お宝多すぎで持ち歩き(できれば触り)たくないのですが・・・・」

 宝石の類を合わせると、既に金貨数億枚分の財産が店の金庫に厳重に保管(隠)されている。


 「まぁ、過ちを起こさなければ、わしは構わんがのぉ。

 セルジオ、もしもの時には責任は取れよ?」


 「あの何の事を言ってるのか分かりませんが、心に留めておきます」


 何故かニーニャだけが顔を真っ赤にしてモジモジしている。

 紛らわしいので、何とかして欲しいと思うセルジオ。


 「そうだ、セルジオの借金を一気に返済しようと思うのだがどうだろうか?」

 「・・・・返せるのですか?」

 「うむ、いま半分くらいの所かの。たぶん、半月もせんうちに目処が付きそうな勢いでのぉ」

 「うんうん、セルジオさんの稼ぎハンパ無いですからねぇ」ニーニャも頷く。


 「あ、村長、猶予が有るのでしたら手狭なので家を改築しようと思うのですが、いいですか?」

 「そうか、年内は大丈夫じゃの、増築だな・・・・ジードには言ったのか?」

 「えぇ、依頼する前に村長にお話してからと思いまして」

 「うんうん! 建替えしないと!手狭で私の部屋が無いのは困ります!」


 ニーニャが俄然やる気を示しているが、彼女の家ではなくセルジオの家である。


 「そうか、新築となるとそこそこ掛かるの・・・・」

 諸兄等は気が付いていると思うが、話が新築に変わっている事にセルジオは気付いていない。


 「よし、わしからジードの親御にも言っておこう」

 こうしてセルジオの考えを他所よそに劇的ビフォ何とかが、なんとなく開始されゆく。



 「あ、そうそうセルジオ、お前の借金が返し終わったらのぉ。

 わしは村長辞める事にする。

 での、お前の家でわしを雇わんか?

 まぁ返事は後でいい、考えておいてくれ」


 返事も聞かず爆弾発言を残し去っていく村長に、二人は呆然と立ち尽くしていた。 



・・・・

これ迄の記録(資産が膨らんできましたがセルジオはよく分かっていません)


 ダンジョン探査 21日目

 潜入階層不明


 名前セルジオ:年齢18歳:男性

 職業:墓守兼農夫

 埋葬者数 543 回収遺体 541


 装備

  墓守の石鋤いしすき

  死者を埋葬するために使用すると魂魄が強くなる。


 夢現ゆめうつつのメダリオン

  ダンジョンの通行書を兼ねている。

  魔法の罠は動かない。


 村長預かり

 ※通貨イメージ

 金貨一万円・銀貨千円・銅貨100円:金属価値で比例した大きさと判断下さい。


 所持金:金貨5180枚 

     銀貨1342枚

 宝石(時価):大粒のダイヤ

        大粒のサファイア

        大粒のルビー


 ニーニャ預かり

 ゴダールの硬貨 金貨 30枚

         銀貨 15枚

         銅貨 28枚

 素早さの指輪 3個

 回復の指輪  2個

 力の指輪   2個


 未鑑定

  死者のサークレット5個

  死者のネックレス 8個

  死者の腕輪    5個

  死者のイヤリング 7個

  死者の指輪   23個

  死者の宝石   12個

  死者のナイフ   2口(握りは朽ちており刃のみ)

  死者のスタッフ  1本(木と金属の様な素材だが朽ちていない)

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