12話

 「ハハハハ、なに初心うぶなこと言ってるのさぁ。

 さっきからずーっとセルジオを目でおっかけてさぁ?」


 「だから、出たの オ・バ・ケ! ほんとだって!!

 あなたも泊まっていけば、分かるって!!

 なにニヤニヤしてるの?

 違うから色々あったんだけど、そう言うのじゃないから!!」


 朝からジードがニーニャを揶揄からかってる。


 あのあと、腰が抜けて動けない為、いっしょに居ていい? 居させてください! と泣きつくニーニャに宿泊を許可した。


 すると、漏らしたから下着が気持ち悪いと言い出す。


 しょうがないから取りに行こうとすると、女の子の部屋に勝手に入るなと怒り出す。

 結局お姫様抱っこ(お尻はぐっしょり)で部屋に行き置いてこようとすると、また大泣きする。


 ・・・・で、セルジオは寝床を取られ床で寝ていたのだが、キンキン声で目が覚めた。


 「あぁ、おはようジード。いつも悪いな・・・・」

 机の上の食料に礼をいい、水甕から柄杓で水を救い顔を洗う。


 「セルジオ! あたなからも言ってあげてよ!!」

 「おうおう、もう呼び捨てかぁ熱いねぇ♪ しかも、あ・な・た? 熱い熱い」


 「違ぁああああぁぁあうぅぅううう!!!」


 耳が痛くなるほどの大声に、寝起きの目から火花が出そうだった。


 「もういいだろう、今度ジードも泊まっていけよ。面白いものが見れるかもしれないぞ」


 「・・・・ほ、本当なのか?」

 「あぁ」


 ジードは疑心暗鬼な表情で佇む。

 机の上に貴金属が置かれており、ニーニャがそれを避けるようにしているのが不思議でしょうがない。


 「ニーニャさん、なぜ大好きなお宝を避けるんだい?」

 「え? 避けてないけど・・・・ 本当に幽霊が持って来たの・・・・それ」

 横目でチラリと眺めブルルと身震いする。

 「都に行ったとき平気で触ってたじゃないか、なに今更遺品にビビってるんだ?」

 「何もない靄から、ジャララって現れるののよ? あれ見たら、ただの訳あり品じゃないって解るって! 素手で触るの嫌よ! あなただって呪われたくないでしょ?」


 『それって、避けてるじゃん』 思っても口には出さないジードだった。


 ・・・・


 幽霊を初めて素面しらふで見た日、ニーニャが借りて来た猫の様におとなしく、セルジオに付いて回るから、彼も随分困ったが、結局ダンジョンにはついて来れず。

 家に居るインプにニーニャの番を頼むと、いつもの良く解らない返事をしてニーニャに付き従う。

 彼女も、少し不安な顔をするが、最初の日のインプの事を話すと、しぶしぶ納得してくれた。


 次の日から、セルジオはまた日の出と共に起きて家畜の世話をし、畑を見回りジードが持ってきてくれた軽食を食べてダンジョンに潜る。

 そんな日が数日続いたある日の朝、大石の塀が壊されていた。


 「あれ? 猪でもでたか?」

 塀の一部が壊され、辺りに数人の足跡が残っている。


 大石を退け、開けようといろいろ頑張ったみたいだが、無理だったようだ。


 少し不安になり墓に向かう。


 「・・・・掘り返されてる。 罰当たりな」


 埋められた袋が破かれ、中の物が四散している。


 もとから粉の様な骨と防具の残骸が殆どだが、まれに死者が死後も側に置いておきたかった遺品が入ってたはずだ。

 「本当に呪われてもいいなら構わないけど、しょうがないな」

 幽霊の兵士達に申し訳ない事をしたと気に病みながら、荒らされた墓を埋め戻し、手を合わせ冥福を祈る。


 ダンジョンに潜るのを少し遅らせ、昼前に村長の家を訪れた。

 洗濯物を干す、おばちゃんの回りに、いつも見ない屈強な男が周囲に鋭い視線を向けている。

 セルジオはすこしビビりながら、村長の面談を求め、出てきた村長に被害を伝えた。


 村長も罰当たりだと掘り返した人物を腐くさしながら、噂好きの婆さんに話をしておくくらいしか手が打てないと言うので後を任せて、ダンジョンに潜る。

 半日潰れたので、回収はあまり進まなかったが、その日の夜、村を恐怖が襲った。



 判明したのは、翌日の朝。

 ザザが道端で野垂れ死にしていたのだ。


 髪の毛は真っ白、死んで時間が経っているが目を閉じる事も出来ず地面を掻きむしるような姿のまま死に絶えている姿に、彼の両親も半狂乱になっていた。


 村長からの伝言を持って来たジードと共に村の広場を訪れると。

 人だかりの中、ザザの両親が声を張り上げ、周りの人々に支離滅裂な呪詛を撒き散らしている。


 セルジオの姿が、ザザの両親の目に留まる。


 「セ、セルジオ!おまえか!? おまえがやったのか?!

 困ったとき金を貸してもらった恩も忘れて!!」

 今にも殺してやると言った勢いで迫るザザの両親から距離をとると、足元にあった礫を投げて来た。


 『いや、お金を借りたのはザザにじゃないけど・・・・』と思いつつ石を投げられるのにも耐えた。


 「な、何やってる!! セルジオがそんな事するわけないじゃないか!」

 ジードが駆けつけてくれた。

 俺を庇う様に、ジードも礫つぶてを受ける。


 「疫病神め! この村から出ていけ!!!」


 「やめんか! この子になんの咎がある? そもそも証拠はあるのか?!」

 村長も駆けつけ、セルジオを庇うが、村人の視線は冷たい。


 村長が無理やり村人を返し、治療の為と村長の家に招かれるまま付いていく。


 「セルジオさん大丈夫?」ニーニャさんも駆けつけてくれた。

 彼女も墓が荒らされてる事を知り、自分の腕を抱きしめておぞましい事を・・・などと言っている。


 しかし、惨劇はこの一夜限りではなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る