11話
休みなくダンジョンに潜るセルジオ。
この数日は一日に50体の遺体を運び出せるようになっていた。
その理由は、一か所に大量の遺体があり、その上、ダンジョン内に運び込んだ麻袋と布袋に大量に詰め込み効率的に運び出す様になったからだ。
そして、いつもの様に家で寝ていると毎晩の様に幽霊がお礼を置いていく。
そんな日々が5日程過ぎた頃、遂に住み込み可能なお店が出来上がった。
連絡を受けたニーニャは喜び勇んで自分の持ち物を持ち込み、自分好みの部屋に設えて行く。
・・・・そして最初の夜がくる。
部屋の中、誰もいないのに足音や話し声が聞こえる。
壁や窓からパチパチとはじける音がする。
風も無いのに部屋食器や椅子が勝手に動いたりする。
セルジオならば、隙間風が吹き込む物置小屋に毛がはえたボロ家でそんな音がしても、さほど気にしないであろう。
しかし、ニーニャの家は新築で引渡し初日に事故物件的なトラブルが発生する。
初めて寝泊りをする住居で、異音に寝付けずに窓の外を見ていると、見えてはいけない感じのものがいろいろ見えたりする。
もう彼女がパニックになっても許してほしい。
「hfじゃlf補sェいHふぁうぃh!!!!!!!!!」
家の隣の店で、鶏を〆たようなニーニャの悲鳴が聞こえたかと思うと、すさまじい速さの足音が戸の前までやってきて、扉を打ち抜く勢いで叩く。
ドンドンドンドン!!ドンドン!!
「ひゃぁ!!!!セルジオさん!!ぐぎゃぁああああ!!!セルジオォォさぁああああん!!!」
戸枠ミシミシ唸り今にも壊れそうだ。
明方のニーニャの来訪・・・・夜這いではなさそうである。
「あ、あ、あの・・・・・大石の所からこちらに!!!」
寝ていた所を叩き起こされて、眠い目を擦りながら戸を開けると、ファンシーな寝間着をきて熊の様な縫ぐるみを抱えたニーニャが裸足で立っている。
すごく震えて血の気の引いた青色吐息の女性も可愛いなぁと、呑気なセルジオに縋りつき後ろを指さす。
「あ、あ、あ、あれ」
大石を囲んだ塀から白い靄が吹き出し、風に逆らい坂を上がってくる。
その靄が次第に小分けになり、人型のような姿を取ると隊列を組んで規則正しく進んでくる。
「ひ、ひ、ひ人魂? 幽霊? ひやぁぁあぁ!!!」
腰に縋りつくニーニャ。
・・・・顔が股間にちかいからドキドキするセルシオ。
周囲の温度が急激に下がり、冬までもう少しあるのだが吐く息が白く煙る。
ザ、ザ、ザ、ザ、ザ・・・・・
『捧げ!剣』
ザッザ!
地の底から聞こえるようなエコー最大の音声が頭の中に響く。
『墓守に謝意を!』
ザッ!
白い靄は胸に掲げた剣の様な物を下げ、一斉に傅かしずく。
その中でも隊長格と思われる靄が、独り進み出て、セルジオの目の前、玄関口にジャラジャラと貴金属や古銭を落とす。
そして、振り返り隊列に戻ると、更に深々と一礼し風に流されるように消えて行く。
「「・・・・」」
「あ、あ、あ、あの話、本当だったんですね?」
顎が合わさらず、カチカチ奥歯を均しながらニーニャがセルジオに言う。
「そうですね、俺も起きてる時に見たのは初めてです」
「の、の、呪われたぐないがら、わ、わ、私もっとちゃんと鑑定しる!」
「そ、そ、そうして下さい」
・・・・セルジオの股間にニーニャの頭が当たってブルブル震えている。
セルジオは少し内股で赤い顔をしているのは暗くて見えていない。
朝日が昇るまであと数刻、腰の抜けたニーニャは結局セルジオの家にお泊りした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます