10話

結局ニーニャさんに鑑定してもらうはずの物は、預けるだけで終わった。


 話し込んだ為、3往復目でダンジョンから出てきたら夜に成っており、何とか30体は回収できたと、セルジオは自己目標を達成し人心地付いていた。


 日が沈んでしまい足場も悪く回収した遺体は、申し訳ないが家の隅に並べて置くことにした。


 インプが今日も心配そうに張り付いている。


 青年は疲れがピークに達したのか寝床に転がり込むとそのまま寝てしまった。




 次の日、ニーニャの使いが訪れた。

 セルジオに、ニーニャは心労が祟り、寝込んでしまったと伝えてきた。


 腕輪を取られたことが相当、応こたえた様だ。


 村には宿が無い。

 村長宅で寝起きしているようだが、その辺も考えて店を用意するかと考えるセルジオだった。


 使いの商人は、手元で集まるだけの袋を持ってきていた。

 麻袋と布袋それぞれ100程、数日後にはそれぞれ1000枚は用意できるだろうと言う。


 「・・・・数日後に寝床が袋でいっぱいに成るのか・・・・」

 セルジオが、最悪袋の上で寝ても良いかも? などと考えているとジードが食事をもって訪れてくれた。


 「よぉセルジオ! ちゃんと喰ってるか?」


 「いつもありがとう。そうだジード、裏の畑を少し潰して、倉庫兼商店と寝泊りする建物ってどれ位でできる?」


 「それは、費用か?期間?・・・・その両方か!?


 そうだな、平屋の倉庫なら壁とか適当で数日でできるぞ?

 人が住める建物となると一月以上は欲しいな・・・・

 料金は幼馴染特価、材料費と少しの手間賃で俺が建ててやるよ!」


 「よかった、宜しく頼む」


 セルジオは朝から忙しく動き回るジードを見ながら、昨晩の袋を墓穴に納めた。


 ・・・・

 ジードに倉庫を依頼してから、セルジオはダンジョンと墓所の往復ばかりしている。


 袋を使い捨てにすることにも少しもったいないと感じるが、遺骸の状態が次第に悪くなり個々を判別できない為、一纏まとめに埋葬するようになっていた。


 そんな日が数日過ぎたある日、倉庫が出来上がった。


 「どうよ!セルジオ」


 「うん、いまの家より立派だ」


 柱や張りは厳選された木材でしっかりと組まれ、三方を壁で仕切られた母屋よりも立派な倉庫がそこにあった。


 二人は腕組みして倉庫を眺める。

 ジードが作りや工程について、アーダコーダと語っていると、ふと、顔を上げた。


 視線の先、袋を抱えたニーニャがこちらに歩いてくる。

 「倉庫できました? わぁ立派ですね」

 などと声を掛け、袋はどこに置く?と尋ねながら倉庫の隅にドサリと荷を降ろした。


 「あ、ニーニャさんお体はもう大丈夫ですか?」

 「えぇ、この通り」女性なのに腕まくりして力瘤を作るポーズを決める。


 「そうそう、この倉庫の隣にお店を設えたらだめですか?」


 「え? セルジオさんもちでいいの?」


 「えぇ、いろいろお手間掛けますし」

 「ひゃぁセルジオさん太っ腹やん、惚れてしまいそう♪」

 ニーニャの言葉に自分のお腹を見て『俺って太った?』というリアクション。

 ジードとニーニャが思わず吹いてしまう。


 「とりあえず500位用意したけど大丈夫そうね、今週中には全部納めるわね?」

 「あ、500じゃ足りなくなりそうなので1000で」

 「え?・・・・分かったわ、追加発注しておくわね」

 ニーニャのあとから荷を運ぶ女性の商人に声をかけると、彼女は頷きかけていく。


 「埋葬、一人で大変そうね。 それにしてもペースが速くなってる?」

 「そうですね、個別に埋葬できないので申し訳ないのですが・・・・」


 ゼルジオは両親の塚のほうを見ると周りにいくつもの塚が出来上がっていた。

 「・・・・もうあんなに」一見どこかの分譲霊園風の雰囲気が漂い始めた墓所に思わずこぼす。

 「たぶんあの斜面一面が墓地になるんだな・・・・」ジードも感慨深げに言う。


 「あ、そうそう古銭は全部買い手がついたわ。

 すごい額だから、また村長に預けてるのだけど好かったかしら?」


 「はい、それでいいです」

 「それと、墓地の土地も買い戻したって言ってたわ」

 「おぉ好かったぁ、これで気兼ねなくお墓を掘れます」


 「それと、倉庫の傍のお店には私が常駐することにするけど、かまわない?」

 「「え?」」

 若い女性が、独身のセルジオの家の直ぐ近くに一人で住むというのだ。

 男性陣が驚くのも無理は無い。


 『だって、どこかの泥棒猫にこんな美味しい金づる取られちゃ堪んないし。

 私の地位もここらで確保しないと・・・・』

 などと我欲満載の呟きが零れているのを二人は華麗にスルーする。


 「えっと、追加の預けていた遺品は受け取られました?」

 「えぇ確かに、ちゃんと受け取りも村長に渡してるから後で見といてね?」

 「・・・・分かりました」


 「預かった物を鑑定して残りの袋も持ち込むから、次来るのは5日後かしら。

 それまでに仮住まいくらいできるようになってたら嬉しいかも」

 「あぁ、分かったよ!急ぐよ、でも手抜きしないから、そこんとこ宜しくな?」


 「ふふふぅ、よろしく♪」

 スキップするような足取りで差って行くニーニャを見ながらジードが呟く。

 「セルジオ、喰われるなよ?」


 「え?ニーニャさんってグールかなにかなのか?」


 「・・・・いや悪かった、忘れてくれ」

 ジードは駄目だこりゃ的な仕草をして、新たに建てる店の広さを歩幅で測っていった。 


・・・・・・・・


 これ迄の記録


 ダンジョン探査 7日目

 潜入階層不明


 名前セルジオ:年齢18歳:男性

 職業:ほとんど墓守

 埋葬者数 163 回収遺体 161

 〇入手アイテム


 墓守の石鋤いしすき

  死者を埋葬するために使用すると魂魄が強くなる。


 夢現ゆめうつつのメダリオン

  ダンジョンの通行書を兼ねている。

  魔法の罠は動かない。


  ニーニャ預かり

 未鑑定アイテム

  死者の指輪    7個

  死者のネックレス 3個

  死者の腕輪    1個

  死者のイヤリング 2個


  死者の硬貨 金貨 5枚

  死者の硬貨 銀貨 3枚

  死者の硬貨 銅貨 6枚

  死者の宝石    3個

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る