28cm沿岸砲⑦

 レガドニア協商連合がオース・フィヨルドに配備し、運用した沿岸砲。

 沿岸砲とは、主に海岸に築かれた陣地に配備され対艦戦闘に従事する火砲の事である。

 主な任務としては港湾の防衛や上陸の水際阻止が上げられるが、地形や砲の射程によっては海峡の封鎖にも用いられる。


 モデルはドイツ帝国のクルップ社が開発した28cmFかと思われる。

 というのも、この火砲や同時期の同級火砲に関する資料は極めて少なく、同時期に建造されたドイツ帝国海軍のブランデンブルグ級戦艦でさえ、主砲である28cmKと28cmBLの資料が殆ど無いのだ。

 クルップ社で28cmFと同時期に開発された同口径の砲ならば、性能が似通っているであろうと期待して調べてみればこのザマである。


 なお、アニメ本編において本砲は15門近く登場しているが、史実での配備数は3門のみで、他は別の種類の砲が配備されていた。これは恐らく、砲の種類を一つに絞る事で作画の共通化を図ったものと思われる。


スペック

・上記の事情により不明。


 ノルウェーがオスロフィヨルドのオスカーボルグOscarsborg要塞に配備するため、1891年にドイツ帝国のクルップ社から購入した沿岸砲。配備されたのは1893年に3門である。

 この要塞には当初、1875年からの近代化計画ではクルップ社製30.5cm砲を6門配備する予定だったのであるが、これが予算の問題からクルップ社製30.5cm砲を1門しか購入出来ず、残る5箇所の砲座の内、2箇所は既に旧式化していた26.5cmアームストロング砲が配備され、そして3箇所にこの28cmF砲が配備される事となった。


 1940年4月9日のオスロフィヨルドの戦い(ドロバク海峡の戦いBattle of Drøbak Sound)では、オスカーボルグ要塞のこれら火砲や魚雷発射管でナチス・ドイツ海軍を迎撃。ドイツ海軍側の旗艦であったアドミラル・ヒッパー級重巡洋艦ブリュッヒャーに対し、既に旧式となったこの28cmF砲が初弾から命中弾を与え、これにより前部射撃指揮所を破壊し、続く2発目はオスロ上陸部隊の物資が納まっていた航空機格納庫に命中して火災を発生させてブリュッヒャーを大混乱に陥れた。さらにブリュッヒャーはカホルム島からの魚雷攻撃を受けて2発を被弾し、これが原因で初弾命中から約1時間後に転覆した。

 これによりドイツ海軍側はブリュッヒャーを喪失し、また他の艦艇にも損害が出ている事から撤退を決定。ノルウェーはこの海戦に勝利したのであった。しかし、ノルウェーの首都オスロはドイツ軍の空挺部隊に占領された。


 なお、これら3門の28cmF砲であるが、それぞれ「モーセ」、「アーロン」、「ジョシュア」という愛称が名付けられていたが、その由来はこの砲の砲身がオストフィヨルドに輸送される際、事故によって砲身が一つ海へと落下してしまった事にある。5トン近い鉄塊の28cm砲の砲身が落ちようものなら海が割れるのも納得である。

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