第20話 バンド

「今日も通常営業だな」

 僕はつぶやいた。


「そう」

 白鳥佐紀は言った。


「令子」

「何名前で呼んでんのさ、藤山田」

「日常には超常現象もない。つまらない」

「そう」


 僕達はいつもの公園にいた。

「よぉ」


 見ると城北の北島がいた。

「何だお前」

「何だとはないだろ。俺様もお前に結構やられたんだし」

「お前幾つだよ」

 僕は言った。

「22」

「俺より年上か。6年も高校に通ってるのか」

「そういうことになるな」

 学ラン姿にリーゼント。今時見かけないやつだ。

「いすぎだろ、常考」

「学費は自分で仕事して払ってるのでな。この前はちいとばかしやりすぎたな、すまねえな」

「ちいとばかしって・・」

「元々は俺の子分がおめえらの学校の者に手出ししたのが悪かった」

 北島はそう言うと僕と白鳥佐紀に深々と頭を下げた。

「・・・まぁいいさ。これからは気をつけな。もうするなよ」

「わかったさ」


 白鳥佐紀は僕と北島の会話を聞いていた。

「ふーん・・」

「鈴木佐だっけ、おめえ結構強いな」

「・・伊達に20年生きてないさ・・波乱の人生を送ってきたものでな」


 夕空には烏が数羽飛んでいる。

「そういやぁ最近あんまし鳥を見ないな」

「そうかもなぁ」


「この前商店街の広場でさ、おもしろいバンドを見てさ」

「おもしろいバンド?」

 北島はちょっと興味深そうだった。

「ブラックダイアモンドというバンドだけど」

「ブラックダイアモンド・・聞いたことねぇな」

「それがまたものすごい演奏をしてさ・・」

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