第10話 夕差し
「毎日つまらないんだが」
「ああ、そう」
僕のクラスメートの
「で、だから?」
火影は眼鏡越しの瞳で僕を見た。
彼女は文芸部に入っていて、結構可愛い。髪はショートカット。
「んー火影は毎日おもしろい?」
「毎日そんなおもしろいわけないでしょう、鈴木佐君。大体つまらなかったり、まぁたまにイライラしたり」
「そんな感じだよなぁ・・」
「変化のない日常、私はそこから逃れるためにアニメや小説を見たりしてる」
「あぁ、お前は結構インドアな感じだな」
「ストレス発散のためにゲームをしたりもするわ。シューティングゲームとか」
「へえ・・」
「RPGとかが人気だけど皆そういう願望があるんでしょうね」
「そうだなぁ」
「おれつええとかいうライトノベルとかも」
「そうだなぁ」
「ライトノベルには大体美少女とか美男子とか出てきたりするわね」
「そうだなぁ(火影みたいなな・・)」
「で、主人公は大体性欲とかがあまり見受けられなかったりするわね」
「・・あ・・ああ・・」
「美少女と同じ部屋に一晩いても何もなかったりとか」
「あ・・ああ・・」
「ありえなくない、それ?」
「あ・・ああ・・そうかもな」
「どうしてるのかしらね」
「何を」
「えーと・・つまり性欲は」
「・・それは・・つまりあれだろう・・描いてないけど」
「そりゃ私みたいな美少女だとムラムラするに決まってるわね」
(自信満々だな・・まぁ・・そうだなぁ・・)
僕は火影の胸にチラと目をやった。
それほど大きくはなさそうだが、形は良さそうだ。
「あなた私の胸に目をやったわね」
・・・。
「私の胸は白鳥佐紀さんみたいに大きくはありませんけどね」
・・・。
「私のおすすめの小説をあなたに貸してあげるわ。読んでおきなさい」
火影はそう言うと僕に一冊の文庫本を手渡した。
タイトルには人間失格と書いてある。太宰治の本だ。
「・・あ・・ああ・・」
9月の優しい風が教室に入ってきた。
外は夕差し。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます