第6話 公園

「人生とは何なんだ・・?」

 僕はつぶやいた。


「フッ・・そんなことも知らないの、あんた。人生とは苦しみもがき這いずり回りそしてほんのひと時のささやかな幸せを噛みしめるものよ」

 白鳥佐紀はいった。


「そうなのか?」


 相変わらず高飛車にものをいう女だ。

「お前には何か楽しいことでもあるの?白鳥佐紀さん」


「特に何もないわよ。強いて言うならパフェを食べてる時とカラオケで歌ったりしてる時くらいかしら、フッ・・」

「それでいいのか白鳥佐紀さん。何か夢とかはないのですか?」

「ないわよ、そんなの。とうの昔に捨てたわ」


 ・・・何なんだ・・・。


「これから先の人生はどうするんだ?白鳥佐紀さん」

「何も考えてないわ。とりあえず大学に行ったら気ままに遊ぼうと思ってるけど」

「それでいいのか、白鳥佐紀さん」

「何であんたに私の人生を干渉されないといけないのさ、鈴木佐藤」

「鈴木佐ですが・・」


「あ、私の楽しみの一つは街にたむろしてる不良をとっちめてやったりすることかしら」

 えー・・。

「あなたもそんな感じなのですが・・白鳥佐紀さん」

「あ?私は天使のような女よ鈴木佐君。わかってるでしょう?」

「あ・・ああ・・」

 僕は少し白鳥佐紀から目を逸らして言った。


「あんた、そう思ってないでしょう?鈴木佐君」

 白鳥佐紀は長い黒髪を揺らしながら言う。

「あー天使ですよ、天使、すごく天使ですよ、白鳥佐紀さん」

「・・ならいいわ」


 白鳥佐紀は公園のベンチに腰をかけて言う。

「私見に行きたい映画があるんだけど、次の日曜日ちょっと付き合ってくれない?鈴木佐君」

「どんな映画なのさ」

「えーと、何たらかんたら監督の最近公開されたホラー映画」

(何たらかんたらって・・あれなんだろうけどかなり酷評されてたような)


「その映画は評判がよくないようだけど私そういう映画に興味があるわけね」

(変な人だ・・)


「わかった。付き合ってやるよ」

「付き合ってやるよって、あんた私の彼氏にでもなったつもりなの?事前に忠告しておくけどその可能性はゼロが6つ付くほどだから」

(そんなに否定しなくても・・)


未知瑠みちるも一緒に行くから」

「・・そうですか(まぁ美女が二人もいて僕は嬉しいかもしれない)」

「・・あんた何にやけてるの、気持ち悪い」


 ・・ということで僕と白鳥佐紀しらとりさき三鶴城みつるぎの3人で次の日曜日映画を見に行くことになった。

 読者諸兄はこの前のバンドを見た時の話はどうなったんだ、と思われるかもしれないが、その話はまた別の機会にしよう・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る