とりあえず最終話? 最強兵器、可愛いは無敵っ!
それから、数年後のこと。
「……そうか。完成度も問題はなさそうかね?」
「はい。その様です」
防衛省庁内にある執務室にて、老練そうな男へ、一人の男性職員が報告を行っていた。
「では予定通り、早速ライラノ社へ、これの生産を50体分、依頼する。
至急、その様に手配をしてくれ」
「は? し、しかし……ロボット一体の価格が約20億円もするのですよ。
開発時に生じた減価償却さえ済めば、価格は今の十分の1。いや、もっと下げられると聞いておりますが……その予算は、どこから調達するので?」
「大丈夫だ。何も君が心配する必要はない。
先ずは、福祉施設と国会議事堂や各官庁へ配備を行う。
それから《国防軍》にも、当然に回す。
全ては、総理大臣指示の下。既に、各官庁への根回しは完了しているとのコトだ。今更、君独りがガタガタと言ったところで、変更は無い。
心配するな。表向きは、福祉施設の最新鋭養護用ロボットという形で宣伝をし、一時的に、国防費の予算から一部確保予定だとも聞いている。
これはあくまでも、国防の一環だよ。ならば、問題はあるまい。
それに、さすがの野党も……くくく。
この良さを一度知れば、文句は言わないだろう。マスコミ対策も、各社へ配達済みで万全だと聞いている。
だから、安心をしろ。
とにかく、着実に全国へ急ぎ拡散配備する。政府の方針では、3年以内に、全国で1000体というのが当面の目標数値らしい。
当然、これの海外輸出は原則禁止となっている。これを輸出しては、その価値が薄まるからな。
表向きは、試験的に国内限定にて今後10年間は行う、というのがその建前だ。
この意味、わかるな?」
「はぁ……よくかわりませんが、何となく、わかりました。しかし、この様なモノで、本当に日本を守ることなど可能でしょうか?」
「おい、君は! わたしの《浅海ちゃん》を見て、可愛いとは思わないのかね!」
「…………」
その男性職員の脇には、ライラノ社製、型式FMR01-A03型が、萌えスマイルを一発かましつつ立っていた。その他にも、この長官室内には、数体もの新型萌えモデルが立ち並んでいる。
男性職員は初め、そんな長官を呆れ顔に唖然とした表情で見つめていたが、間もなく、立ち並ぶメイドロボットの完成度・素晴らしさを前に、遂に、頬も真っ赤に納得顔で了解し、更にはビシッと敬礼し、この執務室を出ていったのである。
その後、ライラノ社製のメイドロボットは、テレビCMでもお馴染みの顔となり。国からの補助金によって、その制度枠内で、個人でもそのグレードにもよるが800~3000万円ほどで手に入るようになる。
しかし、補助制度はあるものの、依然として高額である筈のロボットが、予想以上に驚くほど飛ぶように売れ続けた。
◇ ◇ ◇
そうして……メイと初めて出会ったあの日から、三年もの月日が経ち。オレはあれから、特に夢を抱く訳でもなく、進学をし。久しぶりに高校時代の友人達と会い、楽しい一日を過ごしていた。
「ばぁ~か。家を買うくらいなら、《メイロボ》の方が先だろぅ? そんなの今時、常識だよ、常識」
「だけどさ、国の年間補助制度最高額が低すぎてなぁ~。この前うちの親父が購入しに行ったらさ、『十年先まで予約一杯です』って言われたらしいよ。それで買うのは諦めた、ってさ。根性ねぇ~よなぁー。
なぁ、
「ハハ。今頃になって、色んな会社が開発競争に乗り出しているそうだけど、手に入れるのは、相当、難しいらしいね?」
「おい、それよりもお前らコレを見てみろよ、コレ! ライラノ社が、また新型を発表したぞ!
設定年齢、15歳~27歳まで、カスタマイズ可能。新型の《FMR7-Z1》、この見事なナイスバディーなフォルム、メッチャおれの好みだぞぉー!」
「そうかぁ? オレは断然、初期型の《FMR1》シリーズの方がいいけどなぁ~」
「はぁ? 《FMR1》なんて、今更どうすんだよ? 未だに根強い人気があるのは確かだけどなぁ。
ああ~、それよかさ。さっさと社会に出て、メイロボを早く買いてぇよぉ~」
「…………」
そんな話も度々、日々の生活の中で、当たり前であるかのように耳にするようになっていた。
一部では、メイロボを手に入れるために、社会問題にまで発展している始末。
「それよりも基哉。お前ン家は、まだ買う予定とかないのかよ?」
「……」
今更、『既にうちに居るよ』なんて言える訳がなく。
オレは、笑顔で、友人たちに対しこう答えた。
「ああ、一生ないよ♪」
「「一生!?」」
『マイホーム(家)にマイワイフ(妻)そして……今じゃ欠かすことの出来ない、私だけのマイ《メイロボ》。
夢の生活が、今、ここから始まろうとしている――』
そうした宣伝文句が、CMと共に流れていた。今や、当たり前の光景だ。
オレは友達と別れ、家路に着く。
「あ、おかえりなさい。基哉さん♪」
「……」
玄関先には、以前とまるで変わることのない姿形をしたメイが、綺麗な笑顔を見せ、立っていた。その近くには、ステファと妹の
あの生意気だった彩も、あれから三年が経ち。今では、高校1年となり、すっかり女の子らしく変わっていた。見た目だけで判断するなら、メイが彩の妹の様にすら見えるほどに成長している。
オレは、メイと彩の二人に笑顔を向け、それからステファにも困り顔を向け、そのあとにゆるりと口を開いた。
「ああ、ただいま♪」
本当に一生、このままの生活が続けばどんなに幸せだろう。
オレは素直に、この時、心からそう思った。
◇ ◇ ◇
それから更に、数年後……日本周辺では、軍事的緊張感が最高潮に高まっていた。いつ戦争が起きても何ら不思議ではない、その様な状況である。
アメリカ軍は既に、日本国内からの撤退を完了し。他国が、仮に日本への攻撃を行ったとしても、日本政府からの軍事的支援要請をアメリカ議会が承認しない可能性が十分に考えられる最悪の事態となっていた。
国連もこの頃、あてにはならず。自力で、国防を行う他に手立てがない中。遂にこの日、その火蓋が開かれようとしていた。
「ミサイルの照準を合わせ、いつでも撃てる体制でいろ!」
「ハッ!」
「一度に千弾もの数だ。先制攻撃で、倭軍の防衛陣を全て、叩きつぶしてやれっ!」
威勢のいい指揮官の下、下士官たちは発射態勢を維持していた。しかしその時、下士官達が持つスマホの着信音が、ほぼ同時に鳴り響く。
最初は、無視していた下士官達であったが、余りにもそれがしつこいので、『この忙しい時にいったい誰からだろう?』と苛立ちながらも、仕方なくスマホを片手に持ちその画面を見つめると、L○N○から美麗映像が無料配信されていた。
その画面下には、ライラノ社ロゴであるフェアリーマークが鮮やかに舞い。正面の画面一杯に、日本国内にしか未だに居ない憧れのライラノ社製メイドロボット達が、こちら側の兵士たちに向かい、萌え♪スマイルを鮮やかに一発かましていたのである。
そして、そんな萌え♪ロボ娘たちが仲良く持つプレートには……。
《わたし達、数年後から輸出制限【解禁】されまぁ~すっ! お願いだから優しくし・て・ねっ♪》
と書かれてあった。
「よし! 指示が来たぞ、今すぐに撃て!……は? どうしたお前ら??」
発射ボタンを任されていた下士官一同は、互いに顔を見合わせ、このように呟いていた。
「お……オレには、とても撃てそうにない…お前が、代わりに撃てよ…」
「……ご、ごめん。オレにもかなり、無理ゲー……」
「だよなぁ~……」
「萌ぇ~~……」
「き、貴様ら!! 何を考えて……!! ──ん!?」
間もなく、その指揮官が持つスマホにも、着信音が鳴り響き、同じく萌え♪スマイルを一発かまされている。
そして、
「…………。ですよねぇー♪」
と、同じくその指揮官も呟いていたのである。
その萌え♪美麗映像は更に、LINEを通じて全世界へと、即日の内に無料配信され。見事にも、ギネス記録で認定され表彰を受けるに至り。遂には、国連の枠さえも超えた支援軍が世界中から殺到し、日本包囲網どころか、防衛網が敷かれ。最早、世界を相手に戦うのとそう変わりないほどの万全なる防衛体制が整えられるに至った。
こうした予想をも遙かに超える出来事が起こる最中、相手国トップ主席のスマホにも、やがて着信音が鳴り響き。その画面を開くなり、《萌え♪スマイル》を一発ぶちかまされ、それに対し歯ぎしりをしながらも遂に、そのトップ主席は思わず、この様に呟いてしまう。
「…………。も、萌ぇえ~♪」
こうして、日本の平和は、見事に守られたのであった。
《メイロボ》 ─ おしまいっ─
[作品総文字数、約13000文字弱]
──からの~っ、続くっ!! ←ココ重要☆
─────────────────
引き続き〖メイロボっ☆〗を、お楽しみくださいっ♪
─────────────────
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます