第1話 それはある日、突然に!?

 誰でも、一度くらいはこう思い、考えてみたことってないかなぁ~? 


『この世に、ドラえもんみたいなのが本当に居ればいいのになぁ~』ってさ。

 かくいうこのオレ、秋葉あきば基哉もとや(15歳)も何度となくそう思った信者の一人だったりする。


 今年の初春、高校入試を無事に終え。高校生としての生活をどうにか有意義に過ごし始め。この高校時代を共に過ごすことになるであろう友人たちも、段々と固定化して来た十二月も半ば。こんな、な話が我が家に舞い込んできた。


『唐突なんだけど、妥当性確認モニターやっちゃってみない?』

「モニター??」


『そうそう♪ 何気にうちの会社で作った《試作ロボット》の、一般モニターを募集しよう、って事になっちゃってさぁ~っ。商業的にも売り出すのなら、そういうのも大事だ、ってことなんでな』

「ロボットおーっ!?」


 夜遅く、家族揃ってテレビを愉しんでいる最中、急に伯父さんがそんなことをお茶目な感じで切り出してきたのだ。


 その場に居合わせた、お袋と今年中学一年生のひかりとオレの3人は、目も点となり。PC用27型、4K液晶モニター画面に映し出されている伯父さんを、ドングリ眼で見つめた。

 そんな中、隣でソファーに座る父がカラカラとふんぞり返って大笑い、口を開く。


「兄さん。そんな何時いつするかも知れない《R指定》危険物、勘弁してくださいよ。ハッハッハ♪」

『……』


 うちの親父はきっと、エ○ァン○リオンを脳裏に浮かべたのだろう?

 しかし途端、伯父さんは画面向こう側で、実に不愉快そうな顔を浮かべておる。


『そうかぁ? 嫌なら他にあたってみるけど。因みに、外観は《こういう》のロボットなんだけどなぁー……そいつは残念だ♪』

 と、伯父がニヤリ顔で見せてくれたそのロボットのPV映像は、誰がなんと言おうと見事なまでの美麗、モデル! 



 ――ぶっ、ふぅううううー!!



 うちの親父に至っては、鼻血を前方へと撒き散らしつつ、モニター画面に張り付き、「いやっ、わかりましたよっ! お兄さんの頼みですからっ、断れませんからねえー!!」

 と、さかりのついた猫の如く吠えていた……。

「……」

「……」


 隣に居る妹のひかりは、呆れ顔に肩を竦めている。

 因みに、このオレも同じだ。


『そうかぁ? じゃあ、「決まり」ってことで♪

あとね。まだコレ、《試作機》段階だから、ってコトでいい?』

「内密?」


『ああ、色々とこちらにも事情があるモンだからさ。《誰でもいい》って訳にはいかないの。まあ早い話が〝企業秘密〟で、しかも〝国家機密〟だから。取り敢えず、親戚の娘、ってコトにでもしておいてくれる?

ホント頼んだよぉ~♪ くれぐれも目立たないようにお願いねぇ~♪』



「……」

「………」

「…………」

「……………」

 とまぁ~そんな訳で、それから一週間後のこと。今まさにこのオレを含めた家族一同の目の前に、は来た訳だが……。『秘密』な筈である筈のそれをうちに届けに現れたのは、一般企業。それも、便、だったので思わず呆れちまう。


 因みに、《美麗な羽の生えたフェアリー》のイラストが実に愛くるしい事この上ない、最近宣伝され始めたばかりの新興運送会社ライラノ・フェアリーズ運輸。


 企業秘密&国家機密だと聞いて、緊張していたのに。肩の力なんて、一気に抜けてしまう有り様だねぇ~っ。やれやれ……。



「なんだよ、コレ。機密も秘密も、既にあったモンじゃないよなぁ~?」

 オレの隣に居る妹も、オレと同様に呆れ顔。それから肩を竦めてみせ、同感、とばかりに深いため息をつく。

 親父もお袋も、そんな彩と同じ心境らしく、目も点で、やはり呆れ顔ときた。


 そして、間もなく。

 その運送会社の可愛らしいロゴ・イメージには似つかわしくない、大型のトレーラーで運ばれて来た、は。オレ達家族の想像を遥かに超え、ド馬鹿デカイ大型のステンレス製の箱なので、驚かされる。

 が、



『精密機械につき、取り扱い注意!』

『最重要かつ《国家機密》かつ《企業秘密!》』



 と、斜めに……。

 しかも、無駄なほど大きな赤い張り紙が、至るところにベタベタと張り付けられてあった……バカだろ?


 う~ん、コレはなんと言えばいいのか……目立つこと、この上ない。語るに落ちるとは、まさにこのコトか?


 というか、マシでバカ過ぎるだろ?


 未だトレーラー内で固定されていたは、内部に装備されているロボットアームを用いて、ゆっくりと《搬送用カート》らしき上へと静かに横向きに降ろされておる。

 と同時に、固定ロックがガチャリと装着された。


 何気に格好いい……。


 どうやら、その搬送用カート自体も、自走式のA.I.ロボットらしく。女性のアナウンス音声が(しかも、どこかで聞いたことのある声優さんの美声で)、度々聞こえてくる。


 操作の方は、タッチパネルで行えるようで、『これも何気に機密ではないのか?』と思われるその自走式ロボット・カートを、その運送会社のお兄さんらは、随分と手慣れ様子で操作してやがる……。


 明らかに、プロフェッショナル感の漂う運送会社の人たちで、不自然極まりないのだが……。これは何かあるな?


 それにしてもは、縦の長さだけでも2メートルは軽く超えておるのではないか?

 厚みも、相当にある。

 大きさ自体は、冷蔵庫よりも背が少し高い程度なんだが。その重量感は、冷蔵庫の比なんてモンじゃなさそうだ。

  迫力と凄みは、圧巻、の一言に尽きるのでな。


 オレたち家族一同が、その運ばれてくる想像以上のに、呆れ呆然と立ち尽くし見つめる中。いつの間にやらザワザワと、トレーラーの周りに、ご近所の住人たちが大勢集まり出し、もうからヒソヒソと噂話を始めてやがる……。


 つまりはこの時点で、『極秘にね?』という約束事は、していた訳で。

 オレはこの現状を把握し、諦め顔に苦笑う。


 何はともあれ、これ以上、騒ぎが広まるのも困るので、その大荷物をうちの居間にまで自走式の搬送用カートにて颯爽と運んで貰う。

 そうして、可愛らしいフェアリーが目印の運送会社の人たちは、ようやく帰ってくれたのだが……。

 

 そのあと、オレを含めた家族一同、その場で見つめ合い。大きなため息を吐き。その場で、「ご近所には、どう言い訳したら良いものか」と相談し合うことにする。


 だけど、結局のところ出て来たのは、苦笑いと溜め息くらいのものだったのだが……。


 はぁ~っ。

 


  ◇ ◇ ◇


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