第24部:運命の星、掴む者

#00

 



皇国暦1560年5月19日 皇国標準時間16:24―――




 キオ・スー城のシャトル離着陸場に格納庫の中から、『流星揚羽蝶』の家紋を舷側に描いた大型シャトルが滑り出て来る。BSIユニットの輸送能力を持つシャトル―――五年前の同じ時期、まだナグヤ=ウォーダ家の嫡男で、“カラッポ殿下”などと呼ばれていた頃のノヴァルナが、キオ・スー城奇襲を目論む傭兵達を迎撃した際に使用した、あのシャトルである。


 そのカーゴ・ベイに搭載しているのは、BSHO『サイウンCN』と二機の『ライカSS』だった。


 ホバリング移動で進んで来たシャトルが停止したそこには、パイロットスーツにヘルメットを左腕に抱えた、ノアの立ち姿がある。長い黒髪をなびかせ、シャトルを見上げるノア。




 やがてシャトルのコクピットに乗り込んで来たノアは、機長席と副操縦士席に座るカレンガミノの双子姉妹に告げた。


「ノヴァルナ様より先程、ト連送が発信されました。私達も衛星軌道上にいる星系防衛艦隊の砲艦へ向かいます」


 凛とした表情で命じるノアに、一卵性双生児のカレンガミノ姉妹は声を揃えて、「かしこまりました」と応じる。

 ト連送…それは夫のノヴァルナが、敵本陣へ突入を果たした事を伝える電文だ。それに合わせてノアは、自らのBSHOと共にラゴンの衛星軌道上へ上がる。敵がラゴンへ接近して来た場合に備えてである。


 そしてト連送を発してなお、イマーガラ艦隊がラゴンへ迫ってくる時…それは、本陣に突入したノヴァルナが、討ち死にした事を示す。



 その時に備えてノアは、宇宙へ上がるのだ。



 最終防衛線で『サイウンCN』を操縦し、敵艦隊に吶喊。ドゥ・ザン=サイドゥとその妻オルミラの娘、さらには天下御免の大うつけ、ノヴァルナ・ダン=ウォーダの妻として自らの生を全うするために。さらに冥府でも、ノヴァルナの隣に座る資格を得るために、ノアを乗せたシャトルは曇天の空を宇宙へ向け、真っ直ぐに駆け上がって行った………






▶#01につづく

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る