二人の視点で同じシーンを対比させる、というのはそれだけで大変な労力が必要です。
単純なすれ違いやあからさまな真実を用意したって、面白いと感じられないからです。
本作はめちゃくちゃややこしい人間関係とか、如何ともし難い心理描写があるわけではなく、物凄くシンプルに、物凄く分かりやすく、物語を設計されています。
「甘いものには苦いものを」「苦いものには甘いものを」
この対比が絶妙で、お互いが何を目的として喫茶店に連れ添ったかが端的に表されている。
おそらく彼女は喫茶店という空間そのものが元々好きで、だから仕方なく誘いにも乗った。
反面、彼の方はコーヒーとかあんまり興味なくて、でも甘いものは好きだし彼女が喫茶店好きだと分かっていたから誘った……そういう過程が、そこだけでも見て取れます。
このまま別れてしまうのも良いし、それでも彼が諦めずに攻め続けるのも良い。
ここだ、というタイミングでの締めくくりが心地よいです。
台詞がちょっとキザというか、方言勢としては標準語の人って「〜だぜ」とか本当に言うのかな、と疑問符が浮かぶ箇所もありましたが……標準語の人たちの語尾はどんなんなのでしょう。
「〜だよ」? 何かそれも想像がつかない……。
他の作品も是非読ませていただきます!