12月4日  聖バルバラの日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日2017年12月4日は『聖バルバラの日』である。


 聖バルバラの日とは、3世紀ごろ、キリスト教が禁止されていたローマ帝国でキリスト教への信仰に目覚めた少女バルバラが処刑された日を元に制定された一日である。


 創作物でバルバラと言う言葉を聞いたことがある人がいるやもしれぬ。

 バルバラは実在とされる人物で、ニコメディア、現在のトルコの裕福な家庭に生まれ育った。求婚者たちから美しい娘を遠ざけようとした非キリスト教徒の父、ディアスコロスによって塔に入れられた箱入り、いや、塔入り娘である。


 その塔での幽閉生活でキリスト教に目覚めたバルバラは、塔の浴室建設の際に二つ作る予定だった窓を三つにするように注文を出す。これは、キリスト教における三位一体を表すためであり、それが原因で娘がキリスト教徒であると知った父は激昂し、娘に手をかけようとした。だが、その瞬間岩が二つに裂け、バルバラを包み連れ去って行った。


 塔の外に出たバルバラであったが、彼女を見つけた羊飼いに密告され、バルバラは再び捕らえられてしまう。そして、キリスト教を信仰した廉によって、火で身体を焼かれるなどの拷問を受ける事となる。

 しかし、翌朝には神のもたらした奇跡によって傷は癒され、その裸身は白い薄衣で人目に直接触れないように覆われたとされる。

 後の12月4日にバルバラは剣により殉教する。密告した羊飼いはイナゴに姿を変えられ、父は稲妻に打たれて死んだ。これがバルバラの伝説である。


 現在では、バルバラが獄中で壺にいけておいた桜桃のつぼみが、処刑の日に花を咲かせたとされることから、この日、桜桃の枝を壺にさす習慣がある。また、この日に皿に入れた水に小麦を浸しておき、クリスマスごろの芽の出方で翌年の豊凶を占う風習もあり、これを「バルバラの麦」と言う。


 どうも、キリスト教の歴史は神の軌跡により信じがたい出来事が多い。それにしても、密告したからと言ってイナゴに姿を変えるのはちょっとやりすぎではないかと私は思った。

 しかし、それくらいインパクトのある話であるからこそ、キリスト教はここまで繁栄してきたのである。恐らく、キリスト教にまつわる数多のエピソードを作り上げてきた人物がいるのだとしたら、脚本家として、作家としても大成していたに違いない。




 今日は聖バルバラの日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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