11月8日 たぬき休むでぇ~
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
さて、本日、2017年11月8日は「たぬき休むでぇ~」である。
たぬき休むでぇ~は、滋賀県甲賀市信楽町の信楽町観光協会が、信楽焼の狸の置き物が持つ徳利に「八」と書かれていることから制定した、信楽焼の狸の置き物の休日である。
信楽焼の狸の置き物とは、画像を見れば大抵の日本人ならピンとくるだろうが、言葉で手っ取り早く説明するならば、よくそば屋やうどん屋の前に置いてあるあれである。傘を被り、笑っていたり真顔であったりするあれである。
なぜこのたぬきが店先に置かれるようになったのか。それにはこんなエピソードがある。京都に藤原鐵造と言う陶芸家がいた。修行に明け暮れる彼は、ある夜、不思議な大狸小狸が月光に照らされて、ポンポコと腹鼓を打っていたという夢のような体験をした。
その後に親方から何人に一人しか聞けぬ狸の腹鼓だと聞かされた藤原鐵造は、自身で小狸を飼い、観察をしては、この時の出来事を思い起こし縁起物としてのタヌキを作り続けた。
後の1951年に、昭和天皇が全国巡幸で訪れた際、旗を持った狸が沿道で歓迎をしたところ、天皇が『をさなどき あつめしからになつかしも 信楽の狸をみれば』と詠われ、一躍全国に広まる事になる。
縁起物としてのタヌキには、商売繁盛の為様々な所以がある。
火の粉が振りかぶらないように傘がされ、お客をよく見れるように目は大きく見開かれており、金がなくとも信用を大切にするように通帳をぶら下げ、食料に困らぬよう徳利を掲げ、不況でも倒れぬ安定感を持つようにしっぽが大きく、どんな出来事にも腰を据えて対処できるように腹がでており、顔には愛嬌があり、金が貯まる様に玉が大きい。
考えてみれば、このたぬきがいる店は、どこも長く続いているような気がしないでもない。もしかしたら客も無意識の内に、このたぬきに引き寄せられているのかもしれぬ。
それにしてもこの置物に休日を設けるとはなんとも粋な話じゃあないか。ならば、年中無給で働き続けるカーネルサンダースや、ペコちゃんにも休日を与えてやってもいいのではと、労働基準監督署に訴えてやって欲しい一日である。
今日はたぬき休むでぇ~。特別な一日である。
我々は本日を祝福し、過ごさねばならないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます