8月22日 『モナ・リザ』、『叫び』が盗まれた日
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
本日2017年8月22日は「『モナ・リザ』、『叫び』が盗まれた日」である。
芸術に疎い私でも知っている超有名作品、レオナルド・ダ・ヴィンチ作のモナ・リザ。そしてエドヴァルド・ムンク作の叫び。奇しくも、この2作が盗まれたのは全く同じ日であった。
モナ・リザが盗まれたのは1911年のこの日。フランス人画家ルイ・ベローがスケッチの為にモナ・リザを見に行ったところ、その姿が見合たらずに警備員に連絡をした。しかし、警備員は宣伝用の写真撮影の為に絵を移動していると思いこんでいた。
盗難が発覚したのはそれから数時間後、ペローが美術館関係者に問いただしそんな撮影は行っていないと返された時である。
展示していたルーブル美術館は捜査の為1週間の閉館を余儀なくされる。
「ルーブル美術館」など燃えてしまえ。そう公言していたフランス人詩人ギヨーム・アポリネールに疑いがかかり、彼は逮捕、投獄された。アポリネールは友人であったパブロ・ピカソに助けに求めるが、ピカソ事態にも疑いの目がかかっており、尋問を受けている。
発見は絶望的と思われていたモナ・リザであったが、事件から2年後、かつてルーヴル美術館に雇われたことがあるイタリア人ビンセンツォ・ペルージャがフィレンツェのウフィツィ美術館館長に『モナ・リザ』を売却しようとして、逮捕された。
発見時のモナ・リザの価格は16億3000万ドル程。彼は2年間、自宅のアパートにモナ・リザを隠していた。
ムンクが盗まれたのは2004年のこの日である。白昼堂々、覆面をしたふたりの男がオスロのムンク美術館に押し入り、『叫び』と『マドンナ』を盗み出した。
こちらの盗難事件に一役買ったのがチョコメーカーのマース社である。
M&Mを販売するマース社は、叫びの絵の中に石けりをする自社キャラクターを書き入れ広告宣伝。有力情報に報酬を提示したのだ。
それから数日後、司法取引で家族の面会と2.2トンのチョコと引き換えに、犯人の一人が絵の行方について口を割った。
ムンクの叫びはオークションで取引された商品の中で最高金額の1億1992万2500ドルである。
モナ・リザも、叫びも、あまりに有名すぎて盗み出せたとしてもその後の売却が不可能だろう。奇しくも同じ日に盗み出された2枚の絵が、奇跡的に発見、返還されたのは、その金額の高さ故の、天文学的価値の加護が美術の神を降臨させたからなのかもしれない。
最も、そんな値段を付けなければ盗まれる事はないわけだが。
今日は『モナ・リザ』、『叫び』が盗まれた日、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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