8月3日  ハサミの日

 やあやあ諸君。

 私の名は塚本。塚本ジュリエッタと申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日2017年8月3日は「ハサミの日」である。


 ハサミの日は美容家で山野学苑創設者の山野愛子が、「針供養」に倣って「ハサミ供養」を提唱し、1978年から実施している一日である。


 美容師にとってハサミは商売道具であり、最も大切なパートナーである。お客に向かって刃物を向けるのは美容師と医者くらいのものであり、免許が必要なのも頷ける。使えなくなったハサミを供養するところから、常に共にするハサミに敬意を払っていると感じ取れる。

 ハサミに限らず、例えばドライバーならトラックが、整備士なら整備用品が、料理人なら包丁が、サラリーマンならスーツが。日々の仕事で活躍している事だろう。


 日本では長年愛用した物には神や精霊が宿ると言い伝えられている。それらが若者には作れない素晴らしい物を生み出していく、あるいは素晴らしい働きを見せるわけだが、重要なのは神や精霊が宿るのは人間の方だという事だ。


 若い美容師が就職し、一つのハサミを手にした。それを10年、20年、いや、50年使い続けたとしたら、長年の経験によりその美容師は素晴らしい技術を得るだろう。その美容師を見たものは、長年使われたハサミをよく切れる、あるいは使い勝手がいい。さらにはこう唱える。神が宿っていると。


 私のパソコンは最近壊れ、新しくしたばかりだが、今度は壊さない様に注意をしながら、とりあえず10年を目安に書き続けてみたいと思う。もしかしたらそこにも、神が宿るかもしれないからだ。




 今日はハサミの日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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