7月20日 ハンバーガーの日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 さて、本日2017年7月20日は「ハンバーガーの日」である。


 ハンバーガーの日は、1971年に東京、銀座にある三越内に、日本マクドナルドの一号店が開店した事を記念し1996年に日本マクドナルドが制定した一日である。この日、店には1万人もの客が訪れ、売り上げが100万円を超えたそうだ。


 そんなマクドナルドが赤字続きに陥った原因となった異物混入事件。あまりに衝撃的なニュースだった為、諸君らにもまだ鮮明に記憶されているのではないだろうか。


 事件が明るみに出たのは2014年。人気商品のフライドポテトの中から人の歯が見つかる。誰の歯かは特定できなかった。

 続く9月には最も安価なハンバーガーに虫が入っていた事を客が指摘し、これを店側が認める。さらにホットケーキの中にはアクセサリーの金具が混入していた。

 11月にはエッグマフィンにプラスチック片が混入。日本マクドナルドは再発防止に努めると文書を提出し、12月にはテリヤキマックバーガーからネジが、さらにはハンバーガーから鉄板が、同じくハンバーガーから毛が、チキンナゲットからはスポンジが、サンデーチョコレートからはプラスチック片が見つかった。


 流れに乗る様にダブルチーズバーガーに発泡スチロールが混入していたと騒いだ男が自作自演で警察に捕まり退学処分を受ける。


 2015年に入り1月にはチキンナゲットから手袋の破片が、ソフトクリームからビニール片が、3月にはソーセージエッグマフィンから謎の茶色い物体が見つかった。


 最近ではテレビなどで取り上げられることも無くなったが、突如急に異物混入が増えて、またある日突然ピタッと無くなると言った話も無いだろう。恐らく、マクドナルドの赤字の原因はマスコミの過剰報道による風評被害にある。


 例えば、高速道路などで大型バスが事故を起こすと、そこからトラック事業の労働条件を改正する為民衆の支持を得るべく過剰に問題となる労働条件を挙げる事がある。

 諸君らも高齢者ドライバーの事故が続けて報道されれば、彼らから免許を取り上げたくもなるだろう。だがそれは、今まで報道していなかっただけに過ぎず、実際見えない所で起こっていた日常に過ぎない。


 マクドナルドの異物混入事件も、これだけ公になる前から起こっていたと私は自信を持って言える。なぜならば、それ以前に私も異物混入を経験した事があるからだ。


 あれは私がグラントバーガー? 確かそんな名前の、肉のパティが太いバーガーを注文した時の事。紙袋を開けるとパティが真っ二つに折れていた。パンに挟めばバレないとでも思ったのか。それでも私は味には変わりないとそれにかじりついた瞬間、「ジャリ」っと口の中で音がした。その時私は確信した。ああ、このパティ、と……。


 私がその店舗に電話したところ、すぐに作り直し、家まで持ってくると言われたが、そんな時間はないと私はこれを拒否した。なにより、誠実に謝罪を繰り返す姿勢に、私の怒りなど消え去っていたのである。


 砂だろうが虫だろうが歯だろうがそんなもの食べた所で人間は死にはしない。確かに異物であり、好き好んで食べるようなものでもないが、それほど大騒ぎするほどの事件でもないだろう。

 なぜなら、寄生虫、化学調味料、添加物。元々ファーストフードは異物の塊だからだ。




 今日はハンバーガーの日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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