7月18日 チャパキディック事件
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
本日、2017年7月18日は「チャパキディック事件」である。
チャパキディック事件とは、1969年に起きたエドワード・ケネディ上院議員が起こした交通事故と、それを隠蔽しようとした一連の事件である。
元大統領、ジョン・F・ケネディの弟にあたるエドワード・ケネディは、チャパキディック島にて行われたホームパーティーに出席していた。
エドワードは、同じくパーティに出席していたマリー・ジョー・コペクニを会場から連れ出し、専用車のオールズモビル88を飲酒運転していたところ、マーサズ・ヴィニヤード島との間にかかるダイク橋から転落する。
事故を起こしたエドワードはなんとか車から生還するも、同乗していたコペクニは車と共に水没した。
脱出したケネディは、警察や救急、沿岸警備隊などへの通報を行わず、そのままパーティー会場に走って戻り、他のパーティー参加者とともにコペクニを捜索した。
翌日になり地元住民が水没していた車を見て通報する。警察の調査の結果、運転していたのはエドワードであり、コペクニの死亡が確認された。
エドワードは「コペクニをホテルまで送っていくために運転していた」と供述したものの、パーティーにはエドワードの運転手も同席していたにもかかわらず、飲酒していたケネディ自らが運転してコペクニを「送って行った」上に、コペクニはケネディとともにパーティーを抜け出したことを他の参加者に伝えなかったばかりか、宿泊しているホテルの鍵と財布をパーティー会場に残したままであったことが判明したため、エドワードは飲酒運転、薬物使用、そして不倫の疑いをかけられるようになった。
エドワードは、兄の意思を継ぎ、大統領選に出馬する未来こそ消えたものの、この事件は執行猶予付きの禁固2カ月の判決を受けただけに終わった。飲酒運転の末に、事故後同乗者を放置して死に至らしめたにもかかわらず、事実上の無罪に等しい判決しか受けなかったことは、その後大きな批判を浴びる事となる。
また、警察当局では当初、エドワードが車を運転していた事が伏せられており、ケネディ家がかけることのできる圧力の強大さが見て取れた。
エドワードはその後も議員を続け、2008年にはオバマ氏の大統領当選に貢献し、そして2009年に死去した。
事実は小説より奇なりとは言うが、これは実際に起こった事件であり、結果である。車と共に水没したコペクニを思うと浮かばれないが、時に権力は不公平を引き起こし人の論理感を破壊してしまう。
せめてこの男が大統領にならなくて良かったと心から思える事件である。
今日はチャパキディック事件、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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